2008年6月29日
コラム「アンテナ」 高知北高通信制 滞納ゼロになったけど・・・
受講料を前納制にした高知北高校通信制 (高知市東石立町)
高知県立高知北高校通信制(吉岡成校長、620人)では、受講料滞納一掃のために、平成20年度から受講料の徴収を「前納制」にして、4月中旬の納付期限を1日でも過ぎれば、その年の受講資格を失うという措置をとった。この措置により滞納は皆無となったが、うっかり納付が遅れた生徒は授業を受けることができなくなる。このような機械的な「滞納一掃」と教育が果たして両立するのだろうか。

高知北高校には定時制昼間部、同夜間部、通信制があり、通信制には他の高校から様々な事情で転校してきた生徒も多く学んでいる。生徒が学校に登校しなければならないスクーリングは週1回。受講料は年間1単位330円で、卒業するために必要な単位を取得するには年間およそ7〜8000円の通年受講料を先に支払わなくてはならないことになっている。

昨年までは「前納制」ではなかったために、開講時点(4月20日頃)に未納でも受講することができた。しかし、通信制という勉強を続けるには困難な環境ということもあって途中で学習を続けられなくなる生徒も少なくないため、未納のまま受講をやめた生徒からの徴収には困難が生じていた。同校の事務担当者に聞くと滞納回収のために家庭訪問しても、県外に転居していたとか、「もう受講しないのだから1年分の受講料は払えない」と言われ、なかなか回収できない事例があるという。

実はこの「前納制」導入には伏線があった。19年度秋に県内部で実施された定期監査で「軽微な注意」として「滞納の解消」にむけての検討が指摘されていたのである。この時に指摘された通信制の滞納の総額は18人、13万3630円。金額を聞いた時には予想よりかなり少額なので面食らった。大部分の生徒がきちんと支払っていたことが分かる。

学校は、この監査の指摘を受けて、他県で実施されている「前納制」へと内規を20年度から変更した。その結果、確かに当年度の滞納はゼロになった(期日までに納付していなければ受講させないのであるから当たり前)のだが、果たして本当にこれでいいのだろうか。入学金を払っていない生徒を入学式に出席させなかった千葉県の高校の措置が大問題になったが、授業を受けることができないという意味ではこちらがより重大ではないのか。

この「前納制」が非教育的なのは、まったく救済措置がないこと。期限を1日でも過ぎたら即アウト。学校は「他県の事例を調べたが、そのようなところはなかった。生徒には機会あるごとに期日までに納めるように繰り返し言っている」という。

では未成年の生徒が親の怠慢で納付が1日遅れたらどうなるのか。生徒に受講意欲があっても、その年の受講機会は奪われてしまう。こんな馬鹿な話があるだろうか。学校はその旨を保護者に確約書を書かせているので問題ないという認識だったが、これなど生徒の教育権の侵害も甚だしい。滞納はゼロになったかもしれないが、もっと大事なものを見失っているような気がしてならない。 

県教委高等学校課に「機械的ではないか」と問いかけたところ、「来年にむけて周知方法など見直すべき所は見直すべきかもしれない」と述べていた。せめて「やむをえない場合」には救済できるような特例措置を設けるなど「教育的」な配慮をぜひしてほしい。(N)(2008年6月29日 高知民報)