2008年6月24日

同和随契訴訟和解議案 総務委で可決 反対は市民クだけ 高知市議会
「仕事保障」廃止へ踏み出す和解案を可決した高知市議会総務委(6月24日)
部落解放同盟系列の高知市労働事業協会に委託した清掃業務が特命随意契約(※)のために高額化したとして岡崎誠也・高知市長などが損害賠償を求められている住民訴訟の和解を認める議案が6月24日、高知市議会総務委員会で賛成多数で可決しました。

議案の審議では上田隆司・企画財政部長が、これまでの高知市の同和団体への「仕事保障」=清掃などの特命随意契約が、同和団体への補助金の代替措置として今日まで続けられてきた経過を説明。「価格が随契によって著しく高くなったことはない」、「法解釈上可能という判断でやってきた」などとこれまでの施策を正当化しながらも、「裁判所から特命随契に法解釈上疑義を指摘され、和解を勧告されている。よっぽどでなければ随契はだめというように国の流れが変っており、法令に基づき随意契約を可及的速やかに解消したい」と、これまでの特命随契による「仕事保障」を廃止して和解を成立させる考えを強調しました。

質疑では部落解放同盟高知市連絡協議会出身議員を抱える市民クラブの議員が、和解案に強く抵抗し、「オンブズマンが言おうが、裁判所が言おうが、基本的な理念を貫いてもらいたい」(浜田拓議員)、「一地方裁判所の疑義があるという一言で、政策変更するのは理解できない」(田鍋剛議員)などと発言。

しかし、他会派からは、これに同調する意見は出ず、法令を順守するため廃止期限を切って和解成立を求める意見が続き、採決では賛成多数で和解議案が可決されました(賛成は新風ク、自民、共産、公明、無所属。反対は市民ク)。

原告の田所辨蒔氏は取材に対し「岡崎市長の任期中には決着してもらいたい。7月1日の和解協議にはそのことを踏まえて臨む」と話しました。

今回の和解が成立すれば、高知市の同和行政の4本柱(@仕事保障、A「市民会館」、B「児童館」、C旧同和向け市営住宅での特別扱い)の一角が崩れることになり、同和行政の完全撤廃へ向けた重要な一歩であるといえます。同時に市側が団体との間で水面下で形を変えた代替案を探る可能性も否定できず、監視を強める必要があります。

※6月26日の高知市議会6月定例会最終日、本会議採決で和解することを認める議案が賛成多数(反対は市民クラブ)で可決しました。(6月27日追記)

特命随意契約
 発注者側の都合で特定の事業者を指定して契約を締結すること。平成18年度に地方自治法が改正され、随契ができる事例が厳しく制限され、「同和」など自治体の政策判断によるものは不可能になった。

主な質疑の内容

浜田拓議員(市民ク) 特別な事情があれば随契はできるのではないか。解放同盟市協のいう「仕事保障」はある程度前進したが、今これを切って、他に仕事がある状況ならともかく、今までの背景経過をたどれば、裁判所に疑義があるとかどうとか言われることはない。行政の裁量権で通せるのではないか。

上田企画財政部長 今までならそうかもしれないが、地方自治法が改正され、随契できる相手がシルバー人材センターなどに限られ、それ以外はだめということになっている。随契はいかんというのが国の大きな流れだ。

浜田議員 シルバー以外はいかんという法律になったのか。

上田企画財政部長 いかんとは書いていないが、書いてあるのはシルバーなどだけ。書いてない随契は見直し、なるべく早くやめていく。

浜田議員 市長の政治姿勢に疑問がある。お上が言ったらその通り。地方自治・分権はなんなのか。自治こそが民主主義の基本だ。声の大きいほうに引きずられているような感じがする。オンブズマンが言おうが、裁判所が言おうが、基本的な理念を貫いてもらいたいが、無理なのか。

上田企画財政部長 あくまで法のたてりでやっており、法制担当も入って検討している。世の中の流れがそうなっている。

田鍋剛議員(市民ク) 30年間、高知市の重要政策としてやってきたことを、和解をきっかけに政策変更しようとしている。(同和地区の)就労や雇用はこれからも大事にしていかなければならないと総括しているのではないか。

福島郁夫・企画調整課長
 今回の裁判で問われているのは政策ではなく随契の法的根拠。法には今回のような(同和)団体はないと裁判所に言われると、見直さざるをえない。

田鍋議員 高知市の政策はこの30年間変っていないはずだ。一地方裁判所の「疑義がある」という一言だけで、政策変更しようとしているのは理解ができない。これまでやってきたのは「雇用・貧困対策」であり、シルバーは「生きがい対策」。一緒にしてはいけない。

上田企画財政部長 地方自治法施行令のたてりでやっている。世の中の流れとして法解釈が変っている中で、裁判所に「疑義がある」と言われて、「そうではない」とは言えない。

迫哲郎議員(共産) 裁判所が和解を勧告する重みを考えるべきだ。法令を守らなければならないという原点から見た時に、裁判所の指摘を受け入れるべきものと考えているのか。

上田企画財政部長 顧問弁護士や法制担当と相談して、和解させてもらいたいと考えている。

迫議員 「疑義がある」というのは、普通に考えると「おおかたは違法」というように受け取れる。

上田企画財政部長 法の解釈上はどちらかといえば「いかんよ」ということだと思う。

迫議員 裁判所は特命随契には明確に違法性があると認めたからこそ和解を勧告したと思う。「可及的速やかに、段階的に」の中身についてはこれから原告と協議するのか。

上田企画財政部長 その通りだ。和解の議決後、7月1日に話をする。

迫議員 「可及的速やかに」というのは非常にあいまいだ。

上田企画財政部長 年数についてはこれから詰めていく。

迫議員 期限の問題は避けて通れない。少なくとも岡崎市長の在任中に解決するべきだ。

戸田二郎議員(自民) オンブズマン側は期限を切らないと和解に応じないと言っている。どこかで線を引かなくてはならない。

上田企画財政部長 年数は協議の中で出てくるだろう。例えば市長の任期中などという話が出てくる可能性はある。

中野城久議員(公明) 職員が「自分たちはいいだろう」と思っていたのに、司法判断で「疑義」を指摘される。この感覚の差はなんなのか。

上田企画財政部長 これから法制のチェックは厳しくなっていく。自分たちだけの考えではなく法的にどうかという点もやっていかなければならない。

中野議員 一地裁の判断でも日本は法治国家、大変重要だ。(2008年6月24日 高知民報)