2008年6月15日

高校問題検討委 入試「学区撤廃」答申へ 審議20分 高知市教委欠席のまま 一極集中に拍車
あわただしく終わった第1回検討委員会(6月5日、高知共済会館)
県下の普通高校入試に設けられている学区(※)を撤廃し、全県一区にする動きが急速に強まっています。学区撤廃は高知市内の高校への一極集中に拍車をかける一方、過疎地高校の存廃にかかわる重大な問題。6月5日には県教委が高校入試や学区のあり方についての審議を外部委員に委ねている「高等学校教育問題検討委員会」(松永健二会長)平成20年度の第1回目の会議が高知市内で開かれました。会議には県教委事務局から「今の通学区域が意味あるものなのか」という提案があり、委員からは「居住地で受験が制限されるのはおかしい」などという意見がだされ、特段の異論もないまま20分程度で学区問題の審議を終えました。

今後の「検討委員会」はあと2回。次回(7月上旬)は「中高一貫校について」、次々回(8月下旬)は報告書のまとめになるため、学区撤廃についての全体会での審議は実質的にこれで終わりました(次々回の会議までに一部委員による専門部会が2回開かれることになっている)。

「高知市の声」なし

学区撤廃によって最も影響を受けることが予想されるのが高知小津、高知西、岡豊など。とりわけ高知西は、今春の後期試験でも39人の不合格者を出すなど、連年倍率が高くなっています。学区撤廃により、この集中傾向に拍車がかかり、結果的に高知市内から市外へと通学しなければならない生徒の増が懸念されるなど、県下の高校入学者の4割を占める高知市の保護者と生徒にとって重大な問題をはらんでいます。

したがって学区撤廃の議論は高知市の実情抜きにはできないはずですが、5日の検討委では高知市の保護者や子どもの声を代弁する意見は皆無でした。検討委員会には高知市教委の代表として岡村修・教育次長が入っていますが、5日の会議に岡村次長は欠席。この他に高知市内の中学校教員が1人、高知市教育研究所長も委員になっていますが学区問題についての発言はありませんでした。欠席の理由を岡村次長に聞くと「県教委から提示のあった日程に別の公務があり出席できないと返事をしたが、会議を開かれてしまったようだ」。高知市の生徒の進路に重大な影響が出る問題にもかかわらず、高知市教委抜きで審議がすすめられているのはどうしたことでしょうか。

シミュレートもなし

検討委の審議では委員から「学区撤廃時のシミュレーションはないのか」という当然の質問がでましたが、県教委は「していない。予想はしずらい」(高等学校課)。これでは議論をしようにも材料がありません。わずか数十分の審議で結論を急ぐのではなく、もっと真剣な議論が求められています。

仮に学区を撤廃するのであれば、現状の定員で「押し出さされる」生徒の行き場を確保するため、受験者の増加が予想される高校の定員を増やすことは当然の措置ですが、高等学校課は「私立の経営を圧迫する」と消極的。

高知市教委の岡村次長は「次回の会議には必ず出席する。学区を撤廃するのなら、高知市の子どもの進路が保障されるような定員増を強く求める」と話しました。

中澤卓史・県教育長は取材に答え「学区を撤廃すれば市外に通う高知市内の生徒は増えるだろう。また地域の学校を残すための要望も強く、一気にやると混乱するかもしれない。難しい問題ではあるが、やはり受験を入口で規制するのはよくないのではないか」と話しました。また「いつまでに学区を撤廃するという出口を決めているわけではないが、改革が必要であれば早いほうがよい。これまでの経過もあり3回の会議が少ないとはいえない」と平成22年4月実施もありうることを示唆しました。

高知市内の公立中に子どもを通わせている40代の母親は「高校は授業料やその他の費用がすごく高い。それで遠くの学校に通わなければならなくなれば交通費が本当に大変になる。お金のない家庭のことを、もっと真剣に考えてほしい」と話しました。

※普通科に通学区域(東部、高知、高吾、幡多)が設けられており、東部や高吾から高知市内の高校を受験する場合にはハードルが高くなっている。(2008年6月15日 高知民報)