2008年6月8日

「後期高齢者」廃止へ県として声上げよ 県民集会実委が要請 尾崎知事「改善しなければならないが制度は必要」
「道路財源並みに声を上げよ」 尾崎知事と面談する後期高齢者反対集会実委(5月28日)
75歳以上の高齢者を差別する「後期高齢者医療制度」の廃止を求めて運動を展開している「後期高齢者医療制度の中止・撤回をもとめる県民集会実行委員会」の構成団体のメンバーが5月28日、尾崎正直・高知県知事と面談し、「県として制度廃止へ声をあげるべきだ」と求め意見交換しました。

実行委員会からは、「なぜ75歳で線を引くのか。人の道に反する。知事は全国一の長寿県をめざすと言った。知事として正式に声をあげてほしい」、「際限なく痛みが広がっていく。できるだけ医療費を高齢者にかけない制度になっている。この本質が大きな問題だ」などの意見がだされ、「技術的な手直しでは国民の怒りは解決されない」と制度廃止へ知事自らが声を上げるべきという指摘が相次ぎました。

尾崎知事は、現行制度に高知県の実情に合わない問題点があることを認めながら、「制度改善のために国への働きかけをしてきた」として、国が提示する見直し案に期待感を示す一方、「後期高齢者医療制度」そのものについては「国民皆保険を維持するための思考錯誤」、「高齢者の医療を支えるために高齢者が一定の負担をする制度は必要」という認識を示しました。

実行委員会の主な構成団体。県社会保障推進協議会、県高齢者運動連絡会、年金者組合県本部、県退婦教、県革新懇など。

実行委員会と尾崎知事とのやりとりの要旨は以下 
 
尾崎県知事 この制度は改善しなければならないところが多い。本県のように過疎化、高齢化が急速に進み、中山間地域が多く人口は少ないが、困っている人が確実にいる高知県の実情には沿わない。厚労大臣との懇談会に私も出席したが、大臣は「社会福祉は地方自治そのもの。今後は企画段階から地方の声を吸いあげていくような仕組みを作りたい」と言った。これはひとつの成果だ。少子化、若年者の人口減、高齢者人口が増大する時代に、高齢者の医療を支えていくため高齢者が一定の負担をする制度は必要だ。

ただし問題はある。「後期」という言葉はいかにも心がない。広報をどれだけやってきたのか。保険料の負担は増える場合もあれば減る場合もあるのだが、軽減措置がどういうものなのかも十分徹底されていない。

−−具体的に何を国に働きかけたのか。

尾崎  @周知徹底について 生活への影響の調査を求めてきた。国も調べなければと言い出している。A低所得者層への配慮 政府与党も見直すと言っているのであまり目立たないが、低所得者への配慮を徹底すべきだと言ってきた。保険料を払うのは個人なのに所得の判定を世帯でするのもおかしい。軽減措置は個人ごとに考えるべきだと訴えてきた。

−−黙って天引きしたことについてどう思うか。

尾崎 たぶん国は黙っていたつもりはないのだろうが、県民に分かってもらわなければならない。説明が足りない。

−−なぜ75歳で線を引くのか。名称の問題ではないし、保険料だけの問題でもない。受ける医療が違ってくる。これは人の道に反する。知事は全国一の長寿県をめざすと言った。制度廃止の声は日に日に増えているが、行政の声が上がっていない。知事として正式に声をあげてほしい。

尾崎 声はあげている。

−−報道されておらず県民は知らない。日本一の長寿県をめざすなら、高知県の実情から出発してはっきり声を上げてほしい。大臣も知事も「支えあい」のため制度が必要と言うが、東京が高知より均等割が安いような制度が「支えあい」なのか。制度そのものが地方切捨てになっている。

尾崎 一人あたりの医療費が高知県は全国二位、三位だからその結果、保険料も高くなっており、金がかかるので高知県の負担が高いという構造になっている。所得に対する配慮措置はあるが、医療費が高いのが贅沢なのか。高齢者が多いという実情がある。医療費の調整をしていないのは問題だと訴えてきている。

−−5倍も10倍も訴えてほしい。

尾崎 認識は一緒だ。所得が低いのに医療費が高いということは生活が大変ということ。もっと保険料を下げる措置を考えるべき。

−−赤い保険証がきた。二回目の赤紙。日本は長寿を尊ぶ国だったのに、なぜ祝えない国にしたのか。見直しではだめだ。長寿のために高知県の知事として声をあげてほしい。

尾崎 私も霞ヶ関にいた。どういう問題をどこへ話を持っていったら、話が通りやすいかということを課題によって考えてやっている。この話はかなり専門的なところがあり、数字を持ってつめた議論をしなければならない。見直しが必要という声は巻き起こっているわけで、我々に必要なのは技術的な課題についてしっかり伝えていくことではないか。

−−道路特定財源以上にやってほしい。

尾崎 道路特定財源は、「高知みたいなところに、もう道はいらん」みたいなことをマスコミが言うから、映像を使ったインパクトがいると考えて徹底してやった。

−−この問題も一緒だ。

尾崎 この問題ではすでに相当な声が出ており、技術的な議論が必要という観点から、つめた話をするようにしている。廃止か見直しかという話はあるだろうが、結果としてよい制度にすることが重要。我々の言ってきたことが反映された見直しになるという印象を持っている。(見直し結果が)深い失望に襲われるようであれば、またやらなければならない。

−−この問題は憲法25条、国の責任放棄だ。技術的な手直しでは国民の怒りは解決されない。厚労省の担当者は「年寄りにも痛みを認識させよ」と言っている。医療費抑制のために後期高齢者を狙い、国民皆保険を崩そうとしている。基本的なところから、きっちり物申してほしい。

尾崎 言い方は任せてほしい。成果があがっていないわけではない。国民皆保険をなくすということではなく、なんとかこれを維持するための試行錯誤だ。

−−それは甘い。

尾崎 制度に付随して指定医制度も入っているのに、みな知らない。

−−後期高齢者診療料は制度の大きな弱点だ。受けている医療を削らなければならない。

尾崎 私にも92歳の祖母がいるのでよく分かる。

−−高齢者にも負担を実感させる制度にしたと国の担当者が言っている。今60歳の人が75歳になった時には保険料は2倍。際限なく痛みが広がっていく制度だ。医療の中身が悪くなる危険が高く、できるだけ医療費を高齢者にかけない制度設計になっている。この本質が大きな問題。大きな怒りがある。
尾崎 なんとか国民皆保険を維持するための試行錯誤と思うが、過程の中で実態にあっていないところが出てきている。そこは技術的に見直すことが大きな効果がある。

−−声を大にして私たちの声を国に伝え、報道にも発表してほしい。こんなに年寄りが怒ったのは初めてだ。

尾崎 声を大にするにも、やり方があり、課題によって戦略戦術を考えている。今回はかなり効果的にいったと思う。(2008年6月8日 高知民報)