2008年4月13日

待機児童ゼロは不可能か? 何かおかしい高知市の学童保育

旭東小「こばと児童クラブ」
小学生の放課後の居場所であり保護者の勤労する権利を守る学童保育は、共働き家庭にとってなくてはならない存在ですが、高知市の学童保育の現場では毎年のように大量の待機児童が発生しており、改善を求める声が出ています。

4月2日、高知市立旭東小学校に子どもを通わせる母親3人が高知市教育委員会を訪れ、舛田郁男教育次長、青少年課員らと面談しました。4月から「こばと児童クラブ」(定員60人)に入会できないとされた7人を、新たな分室設置などで入会できるよう求めるものでした。母親からは「看護の仕事をしている。急患が入ると定時に帰れないので児童クラブが本当に助かっていた。これでは仕事をやめなければならなくなるが、生活がなりたたない」という訴えが相次ぎ、舛田次長は「どういうことができるか考えさせてほしい」と回答しました。

待機児童を当然視

同市教委青少年課によると4月1日現在、市内の児童クラブは総数は53(春野を除く)、総定員2985人で入会予定者は2817人。入
4月1日現在の平成20年度学校
別待機児童数
朝倉小     6人
朝倉第二小  4人
神田小     1人
旭東小     9人
秦小      13人
江陽小     1人
昭和小     8人
高須小     2人
介良潮見台小 6人
潮江東小    2人
横浜新町小   8人

合計60人

待機児童の推移(5月1日)

16年度  64人
17年度  70人
18年度 142人
 19年度  70人 
会を希望しながら入れない子どもが60人となっています。全体では定員に余裕があるにもかかわらず、なぜ入会できない子どもが生まれるのか。「待機児童解消に努力してきたが、児童数が減っているのに入会希望者は増えている。学校ごとに状況に差があり、今回は予想外の入会希望があった(舛田次長)」と地域のアンバランスが原因であると述べました。

現在、高知市が定めている基準では、1月末時点で待機者が10人から19人(学校ごと)になれば分室を設置。20人を超えれば正規のクラブを新設(正規指導員を2人配置、ただし設置場所がある場合)することになっています。言いかえれば9人まで(学校ごとに)の待機児童は必ず出る制度になっています。ある指導員は「毎年この程度の待機は出る。今年が特に多いわけではない。夏休みをすぎれば退会者が出るので、待機者の大半は年度内に入ることができる」。

1月末での入会締め切りは、硬直した運営の最たるもの。保護者の勤務実態が判明するのは多くの場合3月末であり、1月末には希望がなくても4月に必要性が出ることは充分考えられます。実際に20年度では1月末の31人から、4月1日には60人へと入会希望者が増加しています。

秦小学校では1月末は9人超過のため分室の設置基準に達していませんでしたが、4月1日には13人となって設置基準をクリアしているにもかかわらず何の対応もなし。「どこかで線を引かなければならない。締め切りが開設ぎりぎりになれば、職員が少なく準備ができない」(青少年課)と、まるで「早く言ってこないほうが悪い」と言わんばかりの対応で、保護者の勤務の実態にあわせて要求に応えていく立場は見えてきません。

新待機児童ゼロ作戦

南国市では待機児童を生まない児童クラブの運営が努力されているため、待機児童はいません。また開設時間は18時まで(高知市は17時)、負担金は月額5000円(高知市は7300円)など、はるかに保護者の要求に合致したものになっています。「本来、学童保育は自治体が責任をもって運営するべきだが、南国市は保護者が主体になった自主運営でボランティアの懸命の努力もあり、保護者の勤務の実態にあわせて小回りが利く面がある。」(沢本吉子・南国市学童保育連絡協議会理事長)。

厚生労働省は20年度から今後3年間を集中重点期間として放課後児童クラブの登録児童数を3倍化し、145万人増をめざす「新待機児童ゼロ作戦」を打ち出しており、高知市も、これまでのような待機児童を当然視するやり方は改める時期にきています。分室設置に至らない9人までの定員超過は、最も学童保育が必要とされる1学期対策として、臨時的な加配を配置するなどして柔軟に入会させたり、待機者が4月1日時点で分室設置基準に達した場合は、条件があれば年度途中でも開設するなど、待機児童を出さない、子どもと保護者の立場に立った対応が求められています。(2008年4月13日 高知民報)