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熱心な討議が行われたシンポジウム(3月23日、南国市) |
南国市立大篠小学校5年生だった藤岡和輝君が、母親と内縁関係にあった31歳の同居男に殺された児童虐待事件の教訓を話し合うための討論会が3月23日、南国市内で開かれ55人が参加しました。主催は子どもと教育を守る南国市連絡会(竹内功代表)。
発言者は竹内功(元小学校教員)、西山潤(小学校教員)、浜田百合子(保護者)の3氏。この中で西山氏は、事件を生み出した背景にある県教育行政の問題点について以下のように指摘しました。「教育の専門家として最も重要な仕事をする校長に民間人はふさわしくない。県教委は学校現場に刺激を与えるといって大篠小校長を第一号に任用したが、他の2人も含め問題が多い。きびしい検証が必要だ。大篠小校長は県教委の政策立案のため多くの検討委員会委員に重用されていた。県教委は現場教員の声は聞かずに民間人ということでこの校長の意見を重視していた」。
他にも民間人校長のもとで、一人ひとりの子どもの問題について十分話ができないような状態になっていた学校のあり方に議論が集中。転任してきたばかりで10年次研修を受けなければならない教員に問題が多いクラスの担任をさせた学校の判断への疑問、研究授業が非常に多く教員が子どもに向き合うゆとりが失われているという指摘もありました。
また、親が親として成長できるために、孤独な子育てをしている親をなくすPTA活動や地域のネットワーク作り、親が保育士や教員に何でも気軽に相談できる環境の重要性が話し合われました。亡くなった少年と孫が同じクラスに通っていた女性は「孫は和輝君や学校のことは何も言わない。やはりショックなのだろう。今回の事件は人ごとではない。絶対に繰り返してはいけない。事件を忘れずに集会をやっている人たちがいることを知り和輝君の供養にもなると思い、うれしく感じた」と話していました。
会場の発言から
大篠小に勤務経験があり現在同小の学童保育にかかわっている元教員 和輝君のことは知っていた。よく一人で遊んでいた。大篠小は坂本教育賞をとった。校長を中心に児童の学力を上げるための研究ということだが、ものすごい研究授業をやっていた。研究授業をやるには教員1人では指導案が出せないので討議に時間がかかる。子どものことは置いて、毎日毎日会議というようなことになっていた。
1年間、大篠小で民間人校長と働いたが、いっこうに悩まずトップダウンでどんどんおろしていく。教育者ならもっと悩むと思う。担任が男を怖がっていたのなら一緒に悩んで、一緒に男のところに行くのが管理職の仕事だ。県教委も南国市教委もPTAも校長をほうほう(持ち上げるという意味)するだけだった。
このような中で大篠小の先生に余裕がなくなったように私には見えた。障害のある子どもの近くを通っても、まったく知らん顔をするような先生が出てきた。一人ひとりの先生には人間味があると思うが、こういう体制の中では追い立てられていく。民間企業の論理では、数値にあがることでなければ評価されない。やはり今回の事件で学校の責任は重いものがある。
大篠小に勤務経験のある女性教員 校長は「学校を変革するために来た」と自分で言っていた。長年大篠小をコツコツ作ってきた者はあからさまに排除された。学校に以前からある委員会や部会とは別に、プロジェクトチームが知らないあいだにつくられた。保護者には「最後の最後にこんなことになって校長先生はお気の毒」というような雰囲気が強いが、私は「民間活力の導入」を推進してきた県教委、南国市教委がつくった悲しい事件だと思っている。今、教職員が子どもを理解する力が弱っている。事件を契機にいろんな人と力を合わせて感性を磨かなくてはならない。
※坂本教育賞 県内の優れた教育実践を行っている学校に高知県文教協会から贈られる賞で、2007年度に大篠小が「学力向上に向けた新しい視点での教育実践」で受賞している。南国市教委は「年間80回の研究授業、教員相互の参観授業(年間183時間)で、教員のレベルアップをはかり、CRTのC評価(努力を要する)の児童数が減少するなど目に見える成果が現れている」と評している。(2008年3月30日高知民報) |