2008年3月23日

どうなる地デジ放送 テレビ難民ゼロめざして(下) 2011年アナログ停波の延期を
地デジ視聴の方法を広報する総務省などの新聞広告
2011年の地上デジタル化、アナログ放送停止によって各家庭の負担がどのくらい必要になるのかという疑問の声が出ています。県内で想定される主なケースの費用負担についてシミュレーションしてみました。

@柏尾山・烏帽子山の親局から直接各戸のアンテナで受信できる家庭(高知市、土佐市、南国市、香南市など) これまでテレビ高知を烏帽子山の親局からUHF(極超短波)受信していた家庭であれば、新しいデジタル親局は全局が烏帽子山・柏尾山にあることから(同じ方向)、アンテナ関係の変更は必要なし。テレビやレコーダー、チューナーを地上デジタル対応のものに交換すれば高画質で視聴できます。テレビは10万円以上する薄型テレビが主力ですが、高画質が必要なければ従来のアナログテレビにチューナーをつけて済ますことも可能。価格は今は2万円以上かかります。

A中継局からの電波を直接アンテナで受信していた家庭(主に中山間地域) 県下各地の中継局からアナログ放送を受信していた家庭は、全チャンネルがUHF波に変換されていることから、デジタル中継局の位置の変更がなければアンテナを変える必要はありません。

だし中継局の数が大幅に減少することから、これまでの中継局が使えなくなる地域では新たな中継局の方向にアンテナを回す必要性があります。アンテナを回すためには屋根に上がるなどして危険が伴うこともあるため、専門業者に依頼する必要が出てくる場合も。その際には@で示したテレビやチューナー代に加え1〜2万円程度の費用がかかることになります。

B共聴施設を利用している家庭(山間部) 共聴施設の工事費の負担は一世帯最高35000円で、これを超えた分については補助制度を利用することで国と自治体が負担します。この共聴施設の工事費に加え、@で述べたテレビ、レコーダー、チューナーなどの購入費用が別途必要になります。

これまで述べてきたのは屋内配線やブースターなど各種付属機器が地上デジタル放送で使用する周波数に対応している場合(大半は大丈夫)の例であり、老朽化等で対応していない場合には、加えて3〜5万円もの費用がかかるなど、県民の負担は相当な高額になります。

国が共聴施設改修のための補助制度を拡充したとはいえ、過疎地ほど高額な負担が生じるのが実態であり、条件不利地域、低所得者層にさらに配慮した国や自治体の施策の具体化が急がれます。

深刻な業者不足

2011年に向けた最大の課題は共聴施設のデジタル改修工事を請け負う業者の確保です。県情報政策課によると、現在高知県内で共聴設備のデジタル更新工事のノウハウを持つと思われる業者は10社程度。山間部に700以上ある共聴施設の工事に加え、都市部のマンションやビルの共聴施設への対応工事も大量にこなさなければならず、県外からの応援も無理。あと3年で工事が終わるということはきわめて困難です。

県内の業者関係者は「山間部の共聴施設のデジタル対応工事にかかる工期は最短で2日。山からアンテナを下ろしたり、ケーブルを張り替える場合は1カ月かかる。時間がまったく足りない。ケーブルテレビやブロードバンド化で対応する自治体の工事が入ると長期化して大量に人手がとられ、小規模な自主共聴施設がしわ寄せを受けるだろう。県内業者20数社でNPO団体を立ち上げて、早く工事に取り掛かってもらえるように自治体に広報しているが、香美市や仁淀川町は動きが早いが、他の市町村は総務省がコロコロ制度を変えるので様子見している。2011年のアナログ停波を延期するしかない」。

一方高知市まちづくり推進課は「急がなくてはならないのは分かっているのだが、市民に高額な負担をしてもらわなければならず、しっかり説明して納得してもらわなければならない。どうしても時間がかかる」というジレンマに。せっかく国が補助制度を拡充しても、工事を請ける業者が年度内に確保できなければ制度は利用できません。県情報政策課では業者不足による支障を少しでも避けるため「年度をまたいで(現在は単年度)補助を利用できるように制度変更するよう国に意見をあげている」。市町村が早く工事計画を明確にして工事を平準化することに加え、アナログ停波の延期を国が早く打ち出すなど抜本的な対応が必要となっています。(2008年3月23日高知民報)