2008年3月2日

不可解な311億円の県試算 暫定税率撤廃 県財政へのプラス面を無視 道路特定財源
高知県は道路特定財源の暫定税率撤廃の影響額を年間311億円とコマーシャルしています。内訳は県税減収38億円、国からの補助金減少51億円、直轄国道の減少額177億円、市町村への国からの交付金廃止20億円、市町村税減収25億円。311億円のうち県分としてカウントしている266億円について考えます。(金額は断りのない場合はすべて年間)

道路特定財源であるガソリン税や自動車重量税の暫定税率撤廃を求める国民の世論は根強く、国交省や地方自治体の「撤廃されれば地方の道路はできなくなる」という懸命の巻き返しにもかかわらず、暫定税率維持の根拠とされている総額59兆円の道路中期計画の見直しを求める声が自民党中枢からも出てくるようになっています。

議論の中では14000キロの高速道路をはじめとする10年間で59兆円という枠が、国民生活に必要な道路を積み上げたものではなく、特定財源の総額を使いきることから出発したものであることが、国民の前に明らかにされつつあります。
 「59兆円」に代表されるように道路特定財源で持ち出されている数字は、あいまいで「どんぶり勘定」的なものが多くありますが、これは国だけではなく、高知県の出している数字も似たようなもの。かなり怪しいものがあります。

@直轄国道の減少 

影響額の大半を占めているのが直轄国道の事業費の減少額177億円。直轄国道とは高速道路などの国の事業で、県の収支とは直接の関係はありません。重要なのは直轄国道事業には県費から多額の負担金を支払わなければならないために(19年度で約77億円)、直轄国道事業が半減すれば県費負担も半額になり、約38億円の県費支出が減ります。暫定税率が廃止され、高速道路建設のペースが落ちれば、県が自由に使える金が増えることになるのです。

A国からの補助金減少 
 
国からの補助金減少額が51億円。3ケタ国道や県道などを改良する県事業への国からの補助金で、直轄国道とは違い、多くの県民生活に密着した道路改良工事を担っています。国の負担率はおよそ2分の1。県の試算のように国からの補助金が半減され、事業量が半分になるとすれば、県費負担も大幅に(年間約45億円)減ります。

ただし県事業の道路整備は県民生活に必要な工事が含まれることから、単純に県費負担が少なければよいとは言えません。しかし不要不急の道路工事が含まれているのも事実であり、どうしても必要な事業を厳選し、それでも財源が不足するなら、直轄国道負担金で浮いた部分から充当すれば必要な事業は充分確保できます。

B県税の減収 

軽油引取税や自動車取得税などの県税の税収、国税であるガソリン税から県に配分される額が38億円が減るとされていますが、県の試算では自動車取得税の減少額に3億円の計算ミスがあり、担当の道路課も間違いを把握しているにもかかわらず、未だに訂正しようとしません(県税務課が出した数字によると県の減収額は37億円、合計額は約308億円にになる)。

暫定税率撤廃により県の税収が減るのは確かですが、@で示した直轄国道負担金と相殺されることから、県財政への「実害」はありません。また県税減収分は地方交付税で措置されなければならず、減収分をきちんと国に交付税措置させることが重要になってきます。

このように県が盛んに宣伝している「311億円の影響」という数字は、額面通りに受け取れるものではありません。次元の異なる国事業と県税収入を、同じ土俵に無理矢理のせたり、県財政へのプラスの側面は無視するなど、「高知県への影響」というより「県道路課への影響」とでもいうべきもの。高知県民のためにあるべき道路整備と県民負担のあり方はどうあるべきかという議論をわかりにくくするものになっています。

実際には、暫定税率が廃止されて高速道路建設のペースが落ちれば、県財政へのダメージは最小限。一方で自由に使える金が増えます。さらに年間150億円もの県民負担が減少することを併せて考えれば、暫定税率は撤廃し、道路整備を真に必要なものに厳選する機会にすることが、より多くの県民生活を守ることにつながる道ではないでしょうか。(2008年3月2日高知民報)