2008年2月24日

どうなる地デジ放送 テレビ難民ゼロめざして(上) 自主共聴対応がカギ
高知市柏尾山のNHKのデジタル送信施設
2011年7月、アナログテレビ放送が終了し、デジタル放送に一本化されるまでに3年余となりました。高知県でも2006年から地上デジタル放送が始まり、家電店ではデジタル対応薄型テレビやDVDレコーダーの販売合戦が繰り広げられ、県民への認知度も高まりつつあります。一方で高知県が数多くかかえる難視聴地域では「うちのテレビは大丈夫か?」という不安の声があがっています。山間部の難視聴地域でのテレビのデジタル化の課題について考えます。

東西に広く、谷が深い高知県では、現在のアナログ放送の電波が届きにくい難視聴地域を数多く抱えていますが、その大半は山の上に共同アンテナを立て集落ごとにまとめて受信する共聴施設を設置して難視聴を解消しています。

共聴施設のうちNHKが設置に関わっている「NHK共聴」が約330、住民が自主的に作った組合などが設置する「自主共聴」が約370あります。「NHK共聴」については、放送法でNHKが「全国にあまねく放送する」義務を課せられていることから、デジタルへの対応はNHK側のイニシアティブで進められます。そこで高知県で“テレビ難民”を生まないためには、「自主共聴」のデジタル対応がカギになります。しかし、現状は「自主共聴」のデジタル化はほとんどの市町村で進んでいません。

使える補助制度に

共聴施設がアナログ波を受けている受信点でデジタル波を受信できれば、改修は機器の一部の更新で済ますことができる可能性がありますが、配線の老朽化、電波を発信するテレビ塔の位置が変わった(NHKは五台山から柏尾山に移動)こと、中継局の統廃合などにより、現在の受信点で電波を受けることができず、新たな受信点をつくる必要性が出た場合に大規模な改修が必要になる可能性があります。

このような共聴施設の改修に対して、これまでの国の補助制度は使い勝手が悪く、ほとんど活用されていませんでした。しかし来年度からは「自主共聴」も利用できる制度に切り替わること(高知県などが要望してきたことが実現した)になっています。また高知県では独自に、受信点が使用できるのかどうかの調査にも使える補助制度を昨年12月から創設しており、これらの制度を活用して「自主共聴」のデジタル対応を急いで推進していくことが期待されます。

不足する情報

そこで問題になってくるのが市町村の認識。「自主共聴」は10戸以下で構成されている組合も多く、その大半が高齢者。市町村がリードしなければ話は進みません。旧鏡村出身の川村貞夫高知市議(清流クラブ)は「テレビは高齢者世帯の唯一の娯楽。これまでの共聴施設が使えるか、どうかという説明がないため、難視聴地域の住民に非常に不安が高まっている。市役所の対応窓口がはっきりしないのも問題だ」。

このように情報不足から不安を抱えている住民に対し、市町村のイニシアティブで正確な情報を伝え、不安を取り除くための説明会の実施や資料作成が急がれます。 

日高村の名越屋地区で自主共聴組合の責任者をしている西川康夫さん(65)の話 テレビのデジタル化は地区にとって大きな課題だ。まだ役場からもNHKからもきちんとした話はない。情報がなく非常に不安だ。この先どうなるのか、住民の負担はどれくらいのものなのか、まずは確かな情報がほしい。(2008年2月24日高知民報)