2008年2月17日
コラム「アンテナ」 灰溶融か、セメント化か?
エコパーク宇賀
2002年に操業開始した高知市の新宇賀清掃工場は、ストーカー炉でゴミを焼き、その焼却灰を高電圧をかけたプラズマで溶かして、メタルとスラグという再利用可能な資源にする「ゼロ・エミッション」(廃棄物を出さない)という考え方の灰溶融炉で処理されてきた。

メタルには価値の高い金属が含まれていることから安定して販売されているという。スラグの使途は主に道路舗装用の骨材などが想定されていたが、宇賀の工場から出るスラグはJIS規格に合致しておらず、また公共工事の総量が減っていることもあってか、最近は引き合いが減り、三里最終処分場のゴミを埋める際の覆土材として利用するのがもっぱら。「ゼロ・エミッション」からすると少し寂しい状態である。

さてこの灰溶融炉。2006年4月にスラグが炉から噴出する大事故を起こしたことは記憶に新しいが、これについては製造した三菱重工に瑕疵担保責任を取らせ修理し、その後は大きなトラブルもなく順調に運転されている。しかし、いずれ遠くない時期に設備の大幅な更新時期を迎え(耐用年数は約7年間)、その時には高知市は今後も灰溶融システムを続けるのかどうかの重大な判断をしなければならなくなる。

廃棄物処理業界の技術革新のスピードは速い。2002年当時、まだあまり例がなかった焼却灰をセメント会社に引き取らせセメントの原料として利用する方式を採用する自治体が最近は全国的に出てきている。時代は灰溶融からセメント化へと明らかにシフトしている。

セメント会社に引き取られた灰は、処理をしたうえでセメント原料として使われることになるが、現在高知市はセメント会社と協力して実用化が可能かどうかの実験を行っているという。

焼却灰を多量の電気を使って溶かしてもスラグの引き取り手がないという今の状況を考えれば、セメントに再利用するほうが、はるかに「ゼロ・エミッション」にかなうように思うが、ことはそう簡単ではない。現在、高知市孕と須崎市に四国で唯一のセメント工場があるという地の利があるにしても、仮に工場が撤退したり、採算に合わないということで急に引取を拒否されたらどうなるか。ゴミ焼却は「ちょっと待って」ということはできない。

三本博三工場長は「本来は自前で処理するのが理想だが、セメント化という有力な選択肢が出てきた時に、まったく検討しないわけにはいかない。コスト面はもちろん、目先のことだけでなく、将来本当に市民のためになる選択をしなければならない。今の炉の大規模更新までの数年中に方向性を決めなければならないだろう」と話す。灰溶融かセメント化か。それとも双方の併用か。選択は如何に。(2008年2月17日高知民報)