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2008年1月31日付「高知新聞」 |
通常国会の焦点となっている道路特定財源の暫定税率維持と一般財源化に反対する高知県のボルテージがぐんぐん上がっている。1月20日に県が建設業界団体とともに主催した「高知県の道路整備を考える県民総決起大会」で尾ア正直知事が「暫定税率は絶対的に必要だ」と拳を振り上げたことに続き、県道路課は「暫定税率がなくなると今後道路が一切できなくなる」などと懸命に大宣伝している。
これから国会審議で重要な政治的対決点になる道路特定財源について、県としての考えや立場はあるにしても、県民世論が大きく分かれている状況の中で、露骨に一方の側の主張を取り上げ、税金を使って「官製集会」で反対運動を組織し、世論を誘導していくことが行政のあり方として正しいのであろうか。違和感を感じる。
他の課題であれば、これほど県がバランスを崩すことは考えられない。道路よりはるかに県民生活に与える影響が大きいはずの地方交付税の一方的な削減に対してでさえ、県がデモや集会を組織したなどという話は聞いたことがない。こと道路となると、タガがはずれたように、歯止めがかからない。
決起大会で県が負担した費用はどうなっているのかと県道路課に聞いた。会場費として約15万円。また鉢巻きや横断幕、チラシなどで約42万円。道路橋梁管理費という予算から支出したという。
1月31日付の「高知新聞」に掲載されていたが、「土佐はちきん連合」という女性団体の6人が、東京で冬柴鉄三・国土交通大臣に暫定税率維持を要望している。それぞれの団体が独自に要望の実現を求め、上京して陳情するのはよくあることだが、よく聞いてみるとこれも話が妙におかしい。
県道路課によると「この行動には道路課が頼んで行ってもらった。6人の上京団のうち3人分は道路課の負担。のこり3人は市町村に依頼した」(県負担の3人分のうち1人が道路課職員、2人は民間。県負担は20数万円)
民間人が上京するのに県費から旅費を出すというのは、どんな理由付けなのであろうかと、これまた道路課に聞く。「出頭者、鑑定人の報酬、費用弁償に関する条例」で、「県の依頼に応じて公務の遂行の補助をした者」と位置付けたので県費を支出できるとの判断とのことだった。しかし、女性団体としての要望活動が、税金を使うに値する「公務」であるという説明はいかにも苦しい。
県費を使った自作自演は、見方によっては世論の「偽装」ともいえる。アンフェアな手法は県行政の役割を逸脱しており、真剣に高知県の将来と道路のあり方を考えようという議論に水を差すことになる。(2008年2月10日高知民報) |