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橋本前知事が書いた「働きかけ記録票」 |
橋本大二郎前知事の置きみやげともいえる「働きかけ記録票」が県庁に波紋を広げている。この記録票は、橋本氏が引退宣言をした昨年8月頃から、自民党県議に何度も働きかけを受けたこと、その内容は記録票に書いて公表するということを繰り返し言ってきたものだ。
そして1月10日になって出てきたのが、元木益樹県議が道路工事のために土地買収の対象になったクレーン会社への補償の上積みを求めたという一件。
正直、拍子抜けという感じは否めなかった。「なんで○○県議の名前はないのか」。恣意的な公表だと批判する者もいた。元木県議にすれば「なんで俺だけ」といったところだろう。
「働きかけ」の現場は密室であり、受けた側が言出さない限りは、世に出ることはまずないし、また通常の陳情や要望との区分けもなかなか難しい。前知事に自民党県議からどんな接触があったのかは、我々が知るよしもないが、今回の記録票公開を契機に「働きかけ」公表システムのあり方を、よく考えるべき時にきていることは間違いないだろう。
このクレーン会社と元木県議の件は平成18年度から継続している問題で、前知事に話が来る前の段階で、相当なやりとりがあっている。しかし現場サイドからの問題提起は特になく、「働きかけ」を受けたという報告も出ていない。この現場とのギャップこそが最大の問題ではないか。
尾崎知事は「働きかけ」の公表は「後退させない」と繰り返し述べているが、現場で対峙する職員から、報告が上がってこなければ、公開するにもしようがなく、「仏作って魂入れず」ということになりかねない。
この件に限らず最近、現場の職員と「働きかけ」について話をしていると、知事が交代して自民党県議団との距離が近くなったことによる微妙な動揺がある。「下手なこと言いよったら大ごとになりやせんか」、「突っ張っても、上が本当に守ってくれるろうか・・・」。職員が口をつぐむ傾向が強くなっているように感じる。こうやって組織は、末端からじわりと変化していくのだろうか。
これを機に自民党県議などから「働きかけ」の公表をやめるようにというプレッシャーが強まることは目に見えている。尾ア知事が本気で「働きかけ」の公表を後退させないと考えるならば、形骸化しつつある現在のシステムのバージョンアップがどうしても必要だ。足のすくんだ職員が安心して仕事ができる環境をつくるためには、知事の「現場を守る」という明快なメッセージと、通常の要求活動も「働きかけ」も、接触があれば全部記録して公開するという方向性しかない。2月県議会では、この問題での尾ア知事の本気度が問われることになる。(ひ) |