2007年11月26日

コラム「アンテナ」 尾崎新県政の行方
「相乗りは仲良くできた」 当選した尾崎氏の横であいさつする山本有二・自民党県連会長(2007年11月25日20時40分頃)
橋本大二郎県知事の不出馬に伴い、次期県知事を選ぶ知事選挙の投票が11月25日に行われ、土佐高、東大卒のエリート財務官僚出身の40歳、尾崎正直氏が新しい知事として県民に選ばれた。

尾崎氏を推したのは自民、民主、公明、社民の4党に加えて、連合高知、部落解放同盟など、これまで橋本県政ときびしく敵対してきた勢力がことごとく「全員集合」。さらに保守系の「親知事」派県議までが勢揃いし、見事なまでの共産党を除く「オール与党」体制が完成した。

今回の選挙戦は4人の候補がすべて新人であり、またいずれの候補も橋本県政の批判を避けて「改革路線を引き継ぐ」と表明したために、政策的な違いが浮き彫りになりにくかった。尾崎氏は当選直後のインタビューで「橋本県政の何を引き継ぐのか」との問いにこう答えている。「地方分権時代の先駆けが橋本知事。国に隷属するのではなく、しっかり言うべき事は言う。それをしっかり受け継ぎたい。県庁改革も受け継いでいく。橋本知事は県民から積極的に話を聞いた。これは今後4年間も継続していく」

反橋本勢力に担がれた尾崎氏でさえこのような主張に終始したため、4党相乗りには有権者の強い批判がありながらも、「古いしがらみ県政への逆行を許すのかどうか」という争点が有権者になかなか浸透しにくかった。

尾崎氏を推した支持母体を見る限り、今後の県政に不安を感じざるを得ないが、尾崎氏が選挙で有権者に訴えた「橋本県政16年間の県庁改革の成果を活かし、透明で効率的な行政を推進」(同氏マニフェスト)という公約を真剣に実行していただき、しがらみ県政へと逆行することのないよう、しっかりと県民的に監視していく必要があるだろう。

今回の知事選挙の投票率は史上最低の45%だった。何よりも国会で激しく対決しているはずの自民・民主の2大政党が、県知事選では、嘘のように平気で笑顔で手を結ぶ「茶番」に有権者が白けたことが大きい。尾崎氏の有権者全体での得票は3割に満たない。多くの有権者が投票に参加しないという屈折した形ではあるが、「相乗り」への強い批判を示したとみることができる。

尾崎陣営には自民党タカ派から旧社会党左派や県職労まで同居していたため、尾崎新知事も八方美人では到底県政の運営は務まらない。当選後に尾崎氏が「細かい点の違いは出てくる」と漏らしたり、「県議は知事をつつき壊すな」(連合高知会長)などの言葉が周辺でちらつくなど、県政運営の前途多難さの予兆もすでに垣間見られるが、何はともあれ、まずは尾崎新知事の「対話と実行」の中身がいかなるものであるかを、じっくり見させてもらいたいと思っている。(N)