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余っているのに「分け合いあえない」カラクリ |
携帯電話会社のNTTドコモが、キノコをあしらった「ドコモダケ」というキャラクターを使って、家族みんなでファミリー割引に加入すれば基本料金の家族割引とともに、「無料通話分を家族みんなで分け合える」という宣伝をテレビコマーシャルで大量に流していたことを記憶されている方も多いと思います。しかし利用者からは「無料通話分がたくさん余っているのに分け合えない」という苦情があがっています。このカラクリを調べてみました。
NTTドコモでは、「ファミリー割引」に加入すれば「あまった無料通信分を2ケ月くりこせ、家族みんなで分け合える」ことを売り物に宣伝していますが、広告パンフレットの下には以下のような細かい字で書かれた注意書きがあります。
「前月、前々月から無料通信分の繰り越しがあった場合、当月の通信料、パケット通信料は前々月からのくりこし分が、優先的に割り当てられます」
一読しただけで意味を理解することは困難ですが、要するに毎月コンスタントに通話している利用者であれば、無料通話の残高があったとしても、「まったく通話しない月があれば別だが、毎月普通に使っている人であれば、ほとんど分け合うことはできない」(高知市内のドコモショップ店員)というものです。
2000円分の無料通話契約をしているとすれば、当月に1000円分通話し、1000円分を残しても、翌月も同じように1000円分通話すれば、翌々月に「分け合える分は0円。見かけ上の無料通話分は4000円もあるにもかかわらず、分け合えないという状況が発生します。
一方で、ライバル会社のauの場合は当月分の通話料を家族で分け合うことが可能であるため、「分け合い」に関して言えばドコモと比してずいぶん良心的な仕組みになっています。
NTTドコモの携帯電話を家族で使っている高知市内の40代の女性利用者は「どうしていっぱい余っているのに分け合うことができないのか。請求書の明細をいくら見ても意味がよくわからない。あの請求書はわざと理解できないように書いているとしか思えないし、余っていても分け合ることができないというのいはなんか騙されたみたいですね」。
NTTドコモの「無料通信を分け合える」という広告は、昨年12月12日に公正取引委員会から「景品表示法※」に違反するおそれがあるとして注意を受けています(ソフトバンクの「予想外。¥0」という誇大広告への警告と同時期)が、同社の最新のパンフレットには同様の広告が掲載されています。
携帯電話会社はメディアにとって最大の広告主であることもあり、不利になることはまともに報じられず、昨年12月の公取の警告等についても新参のソフトバンク社の問題以外はほとんど取り上げられませんでした。
携帯電話の料金の仕組みは「複雑怪奇」で、自宅に送付されてくる利用明細を見ても多くの利用者はほとんど内容を理解できていないのが実態。無理解につけ込むようにして、利用者を惑わす広告は直ちに中止すべきではないでしょうか。
※「取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認されるため、不当に顧客を誘引し、公正な競争を阻害するおそれがあると認められる表示」(2007年9月9日高知民報) |