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8月1日、次期選挙への不出馬を表明する橋本知事 |
橋本大二郎県知事は8月1日に会見を開き、今年12月に任期満了を迎えることから行われる次期知事選に、立候補しない意向を表明しました。
橋本知事は会見で@意欲、体力、気力は十分あり、次の4年間をやり遂げる自信もある、A今の国と地方との力関係の中で突き破れない壁があり、知事という立場で意見を言っても、らちが明かない。現在の仕事に限界を感じた、B高知県と縁を切ることなく、高知県を拠点に自分の力を生かしてきたい、C国政を視野に入れることは選択肢の1つ、などと述べ、現在国政以外の選択肢は念頭にないこと、国政とは衆議院を意味していることなどを明らかにしました。
また橋本知事は後継については、意中の人物に声をかけているものの、返答はまだもらっておらず、その人物の立候補が不調に終わった場合でも、以外の後継者を探すようなことはしないとも述べました。
解説 橋本知事は参議院選挙が終わった遠くない時期に、次期選挙への出馬について態度を明らかにすると述べていましたが、実際には繰り返し「引き続き続ける意欲はある」と繰り返しており、また「教育税」提唱、県下の市町村を6ブロックに合併する構想に意欲を燃やすなど、続投が既定路線になっていたことから、その真意は分かりかね、唐突な「不出馬宣言」は各方面に戸惑いと衝撃を与えています。
橋本県政の県民に開かれた公正で効率的な県政実現、いち早い同和行政終結、少人数学級の推進、県警の不透明な会計処理批判、国の地方切り捨て政策へ強い反対の意思表明、県議会多数派の自民党の横車に屈しないなどの県民本位の県政の評価は何ら変わることはありませんが、知事が会見で述べた中には看過できない重大な問題が含まれています。
知事は会見で「限界」という言葉を多用しました。これは自らの力に限界を感じたということではなく、「知事」というポジションについてのこと。さらに「憲法上も地方の権利が位置付けられてるわけではない」として「地方の限界」について繰り返しました。
現在の地方自治の実情が、憲法8章に定められた地方自治の本旨が政権によってゆがめられ「三割自治、一割自治」という状況に陥っていることは事実ですが、それは以前から分かっていることであり、いかに「三位一体改革」できわめて厳しい状況に追い込まれたとはいえ、県民の力を信頼して国とたたかうのではなく、「いくら知事でやっても埒があかない」と投げ出すような知事の姿勢は、国の悪政下で住民福祉の防波堤としての役割を果たすべき地方自治体の役割を否定するものです。
また橋本知事は、最終的に不出馬を決めたのは7月29日、参議院選挙の投票結果を見てからであると述べ、「北陸3県、九州、東北など高知県より明らかにゆとりがある県でも、これだけの反応が起きているのは、地域の実感として国の壁、問題点を感じているから。であれば、これまでの経験、力を生かしていくことができないだろうかと思った」と語りました。
橋本氏は国民の意識を読みとるセンスこそがもっとも重要な政治家の資質であるというのが持論。つまり参院選における農村部での自民党の崩れ方をみて、これなら自分にも国政でチャンスがあると判断したということであり、「地方の限界」というのは後付の理由のようにもとれます。
さらに「引退」の第一報が「高知新聞」の単独インタビューによるもので、正規の記者会見は高知新聞に掲載された後に開かれたことも、公人としてとるべき態度ではなく、非常識なものと言わざるをえません。 (N)(2007年8月12日 高知民報)
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