2007年7月15日

身元調べて「特別配慮」 高知市立保育所が同和関係者の入所を優遇 実施根拠示せず
保育所入所の判定には高い公平性が求められる
高知市の保育所のうち旧同和保育所(公立9、民間2)で、入所の可否を判定する際に同和関係者を優遇する取り扱いが今日も続いている問題で、高知市の堀川俊一・健康福祉部長はこの優遇措置に根拠となるものがないことを認めました。市として実施すると決めている同和施策にも入っていない入所優先が慣習的に今も続けられているということは、高知市の同和行政の不透明さを象徴するものといえます。

この問題は、昨年10月30日、朝倉総合市民会館に岡崎誠也市長を筆頭に市幹部60人が呼びつけられた部落解放同盟高知市協による「確認学習会」の席上、「属地・属人(※)で同和保育所を希望した場合の配慮を継続している」と市側が答弁したことから明らかになったもの。
 その後、「高知民報」が取材を重ねる中、入所判定の際、保育の必要性を示す点数に属地・属人の場合には特別に加点していることが判明し、申請者が属人であるかどうかについては「保育課では分からないので『市民会館』に問い合わせている」という実態が明らかになってきました。

同和行政を根拠付ける法律がすべて失効した今日も、市が市民の身元を調査して部落民であるか否かを調べるという時代錯誤的な「同和行政」が今も続いているのです。

健康福祉部のある幹部は「属人だからといって必ず保育園に入れる訳ではなく、あくまでもポイントを加点するだけだ。旧同和地区の住民には自分たちの保育所であるという意識が強く、なかなか現状を変えることは難しい」と「解同」の既得権意識を前にして毅然とした態度がとれない市役所の内情を明らかにしました。
 
「見直し」に記載

6月25日の高知市議会6月定例会では林昭子市議(共産)がこの問題を取り上げました。答弁に立った堀川部長は「平成14年の『同和対策関連施策の見直し』で、入所基準については今後においても一定の措置を講ずると記載されているので理解してほしい」と述べました。

しかし高知市は14年の「見直し」から5年経過したことを踏まえ、今年2月に新たな「見直し」を作成。現在の「見直し」には、保育園の入所での特別扱いについての記載は一切ありません。堀川部長が答弁で14年の古い「見直し」を持ち出したことは、市として現在は根拠になる文書が存在していないことを自ら認めたことになります。

「根拠のない『闇優遇』になるのではないか。行政の公平性が問われる」との質問に堀川部長は、「確かに問題はある。次回見直しの時には、解消するようにしたい」と述べました。高知市に残存している「同和行政」の中でも個人の旧身分が直接「資格」要件にされるのは、この問題だけ。実施の根拠もない特別扱いは直ちに中止すべきです。

※属地属人 旧同和地区内に居住し、かつ同和関係者と市が認定している人のこと。旧同和地区では人口の半数以上が転入するなどして同和関係者ではない状況があるため、個人向け同和優遇は地区内の住民を選別して行う仕組みになっている。同和関係者であるかどうかは「市民会館」が判定する。「市民会館」には「部落民名簿」に等しい「世帯票」が今も備えられている。
(7月15日 高知民報)