2007年7月6日

三嶺一帯のシカ食害深刻 森林維持再生が困難に 守る会が調査結果公表 個体数調整など対策は緊急課題
シカに食われて下草が消滅するディアーラインが形成されている(綱付新道付近)
増えすぎたニホンジカの食害により森林の再生が困難な状況に陥っている三嶺(高知県香美市)一帯の窮状を訴え対策の実施を訴えるため、三嶺を守る会(山本正彦代表)は7月4日、三嶺周辺のシカによる被害調査の結果を公表しました。

この調査は2007年5月27日に、同会と関係機関の協力により93人が同山域の主要な10コースで実施したもので、四国自然史科学研究センター(須崎市)の協力を得てまとめました。

報告書では、中腹の森林帯で下草が食われたためまったく生えない裸地化による荒廃(ディアーライン)、ササ枯れ、モミの立ち枯れ、稀少植物の消滅など深刻な実態が進行していることが指摘され、会見した同会の坂本彰理事は「山の収容力を遙かに超えたシカが生息しており、自然のバランスが著しく狂っている。事態は深刻であり、行政による早急な対策が求められる」と述べました。

同会は四国森林管理局や高知県、他の自然保護団体などに報告書を送付し、早急に対策を講じることを求めていくことにしています。

今回の調査で、三嶺周辺でシカによる食害が急激に広がって、登山者の中で「山で異常事態が起きている」と言われていたことが、面的に記録されて明らかにされたことは大きな意味を持ちます。被害の実態は深刻で猶予なし。シカの個体数の把握と適正数に調整するための駆除や追い出し、防護柵などの対策が急がれています。四国森林管理局では今年度中に三嶺一帯のシカの頭数調査をする計画をすすめています。

また三嶺周辺とともに被害が甚大なのが旧西土佐村周辺。この山域でも同様の対策が必要です。旧本川村周辺の県境では、まだシカの被害がさほど見られないことから、このエリアを防護することも重要。対策には県境を超えた協力態勢が不可欠であり、森林管理局と各県の連携、情報交換が急がれています。

三嶺を守る会が公表した報告書(PDFファイル)