2007年6月10日

増えすぎたニホンジカ減らすには? 四国山地の被害実態と解決の方策探る 四国森の回廊をつくる会
写真上 会場が満員になった講演会(6月3日、高知市自由民権記念館)、写真下 シカの被害を受けたウラジロモミ。やがてこの木も枯れる(2007年5月27日、綱付森周辺)
ニホンジカの大量増加による食害で四国の山林の荒廃が一気に進行して危機的状況に瀕していることから、シカ問題の解決の方向を探る講演会「四国山地におけるニホンジカ問題を考える」が6月3日、高知市立自由民権記念館で開かれ70人が参加しました。四国森の回廊をつくる会(坂本彰代表)が主催、三嶺を守る会(山本正彦代表)が共催。

発言者は奥村栄朗・森林総合研究所四国支所主任研究官、早田健治・徳島県環境首都課自然共生室補佐。

奥村氏は日本の山でニホンジカが異常に増え続けるメカニズムと対策について報告し、早田氏は徳島県内の被害の実情と登山団体に協力を依頼しての「糞塊密度調査」など徳島県が実施している対策を紹介しました。

 ■講演で明らかにされたポイント

何故シカが増えるのか 本来なら生き残ることができないはずのゼロ歳の子ジカが死なず、大量に生き残るため。@天敵がいない、A暖冬・雪不足が要因。天敵であるオオカミは、子ジカを集中的に食べていた。メスジカは2歳になれば繁殖を始めるため、子ジカのうちに捕獲しなければ個体数を減らすことはできない。成ジカを捕獲しても効果が薄く、特に成長したオスジカばかりを捕っても効果がない。天敵がおらず、暖冬という現在の環境の中では年10%以上増加。7年間で2倍化、10年間で2・5倍化する。

山が良好な天然林の時代にはシカのエサは意外に少なかったが、戦後の拡大造林による人工林の植林が格好のエサ場になった。しかし針葉樹が成長し林業不振の中で山に手が入らなくなり、エサがなくなって、かつてシカの餌場だった人工林がシカを収容できなくなったことから、農地と高山帯にシカの活動場所が移り、農業被害、奥山での自然破壊が起きている。

対策について 森林生態系を管理していくためには、増えすぎたシカの個体数を減らす以外にない。科学的なデータの収集・蓄積、四国各県の連携(シカに県境は関係ない)を進める。狩猟圧を高めるためには狩猟者の役割が重要。高齢化で狩猟者が減っていることから狩猟のイメージアップ作戦、山に関わる者はみんな免許をとる気風づくり、わな猟の規制緩和、シカ肉の商品化などに取り組む。登山者との共同をすすめる。徳島県ではシカのモニタリング調査で登山団体に協力を求めている。経費削減、安全性が高く調査ノウハウがある、登山者と行政との情報共有などのメリットをあげ、財政難の中で実態を把握するために、登山者と協力することの有用性を強調。

会場を交えた討論では「調査をやっているうちにも被害がひろがっている。現実に出ている被害を食い止めるの方策に力をいれるべき」、「子ジカを捕獲する効果的な狩猟法はないのか」、「拡大造林は国策。シカが増えた時期にメスジカ禁猟も国が決めた。国は現場を知らない。シカの個体数管理の第一義的な責任は国にあることをはっきりさせるべきだ」などの意見が出されました。