2007年6月10日

東部地域では一気に大合併要求 県「合併構想」の問題点(下)

田野町での説明会(5月18日)
5月28日の定例会見で橋本大二郎県知事が県が作成した「合併構想」について、新法内に合併させ、さらに連続的に6市合併につなげていく「2段階合併」に否定的な見解を示し、県が作成した「構想」のスケジュールの見直しともとれる発言をしたことが注目されました。

「これは構想の見直しなのか」。政策企画部で市町村合併を担当する隅田明副部長に聞くと「見直しではない。知事から見直すようにという話もない。議論の中ではそういう意見もあるということだろう」とあくまでも「構想」が示す「2段階合併」は有効であると強調しました。

「構想」は6市への再編を、「県も当事者」となって強力にすすめるという意思表示をして、知事による合併協議会設置の勧告も否定しておらず、前回の合併の進め方とは構えが違い積極的に主導しようという姿勢が見えます。

しかし同時に橋本知事は「合併を決めるのは住民」、「押しつけはしない」とも繰り返し明言しています。自治体の自主性と「勧告」は矛盾しますが、「勧告はあくまでも協議会設置までの話。合併する、しないを決めるのは町村」(市町村合併支援室)という言葉の通り、住民がじっくり将来を見据えた討議ができる環境、資料提供をしていくことが県の大切な役割です。

いきなり9市町村を

県「構想」は、東部9市町村(室戸市、安芸市、芸西村、安田町、田野町、奈半利町、北川村、馬路村、東洋町)に対しては「2段階合併」ではなく、新法の期限内(2009年度末)に、他地域では2015年までに求めているスケジュールを大幅に前倒しさせて、一足飛びに「6市構想」に対応した9市町村すべての合併を要求をしています。

しかし「6市構想」の前提になるのは、県の権限と人員の新市への移譲であることは県自身が繰り返し述べていることであり、わずか2年数カ月後という短期間、県からの権限・人員移譲の実態も皆目分からない中で「とにかく新法に駆け込め」というのは道理がとおりません。

「確かに2年後には県の権限はまだ下りていないが、県が移譲に本気であることを見せていく。知事はやる気だ。6市いっぺんにいけば一番いいのだが、どうしても時間差は生まれるわけで、東部にはモデル的な役割を果たしてもらう。移譲が済むまでの過程では、特別な支援をしていく必要もあるかもしれない」(隅田副部長)

冷めた高知市

県の「6市構想」に対し岡崎誠也・高知市長はことあるごとに「コンパクトシティー」を強調し、県が求める嶺北地域との合併には極めて冷淡な反応を示しています。高知市で合併を担当している幹部職員も「今は鏡・土佐山とのまちづくりに取り組んでいるところ。春野町とはこれから合併するわけですからね・・・。次から次へと合併をせかされても困る」という本音を隠しません。

ある県幹部は「確かに高知市はなかなかきびしい。ただ岡崎市長はコンパクトシティの意味をはき違えている。コンパクトシティとは中心街に人を呼び戻すことであり、自治体の規模や合併とは別の話。街だけはよくて、山は知らん、で県都の責任が果たせるのだろうか」といらだちを隠しませんが、破綻寸前の危機的な財政状況に陥っている高知市に、これ以上の山間部を抱える合併は対応できないというのが実際。

このように「構想」の一律的な強要は非常に無理があります。少なくても新法内の駆け込みはやめ、じっくり地域の将来を話し合うことが議論のスタートになるということを県は肝に銘じるべきです。