2007年6月3日

「駆け込み」は住民の議論を阻害 6市へ再編 県「合併構想」の問題点(上)

本山町での説明会(5月16日)
県下の市町村で再び合併をめぐる議論が始まっています。県は3月に県下の35市町村を、6つの市に再編する構想を示し、5月中旬からは橋本大二郎県知事が各地域を回って、県の合併構想を住民に説いています。県の合併構想の持つ問題点について考えます。

6市構想

説明会で橋本知事は、将来の道州制のもとでも高知が生き残っていけるようにという問題意識を押しだし、2020〜2030年に「誰もが、どこでも、安心してくらせる高知」を実現するため、現在県が担っている権限や人員を大幅に市に下ろして道州制のダメージを最小限におさえる。そのために2015年までに6つの市に再編すべきであると述べています。

また地域の特色を守るため、自治区を旧市町村ごとに設け、予算を配分するとも述べ、「合併によるデメリットはない」、「これまでは合併によって地域がなくなると言われたが、これからは合併して地域を残す」と胸を張りました。

県行政が今の国政の流れを見た時に、道州制を見越して市町村を再編しなければならないという結論に達することも理解できる面もあり、議論そのものを頭から否定すべきものではないかもしれませんが、現在県が提案している「構想」と議論の進め方については、県民の真剣な議論を阻害する重大な弱点が含まれています。

2段階合併

5月16日に本山町で開かれた説明会では、動員された行政関係者の姿が目立ちましたが、地元住民からは「知事はきれいなことを言うが、結局国の地方切り捨ての論理と同じではないか」という激しい反発の声が出されました。

嶺北地域では、旧合併特例法(※)の元、2004年に旧本川村が「いの町」に吸収合併されましたが、大豊町・本山町・土佐町・大川村の嶺北4カ町村の合併構想は大豊町の「自立宣言」で、2003年の本山町・土佐町・大川村の合併は協議会設置の是非を問う住民投票の結果、土佐町が否決するという経過を経て、合併に頼らないまちづくりに取り組んでいます。

県が「構想」で嶺北地域に提案している内容は、2015年に高知市と合併することを柱にしていますが(図参照)、それだけにとどまりません。旧法で合併していない嶺北地域の4自治体は現行の新法(※)の期限内に(2009年度末)まずは4町村を合併させたうえで、さらに2015年までに高知市との合併を求めるという、非常にわかりにくい2段階合併を求めています(宿毛市・大月町・三原村・土佐清水市、土佐市・佐川町・越知町・日高村でも同様)。

結局は「駆け込み」

2015年を見据え、地域の将来、県行政の権能をどう市に下ろしていくのかをじっくり議論しようと言いながら、実際にやろうとしているのは、新法の期限内駆け込みでしかありません。

県市町村合併支援室に、なぜ2段階でなければならないのかと聞くと「旧法で合併していない小規模な町村は2015年までもたない可能性があり、合併を急いでもらいたい。新法の期限内であれば優遇措置もまだ受けられる」との回答。

しかし新法には、旧法で「アメ」と称された合併特例債もなく、地方交付税の算定替えにおける配慮、地方議会議員の「在任特例」などがその優遇措置の内容ですが、「在任特例」による大所帯の議会は合併が目指すスリム化に逆行し、住民から厳しい批判があります。また合併を繰り返すことで庁舎移転や町名変更の経費がかさみ、投資が無駄になってしまうなど、新法に駆け込まなければならない理由は見あたりません。

また旧法で合併したにもかかわらず人口が1万人にも満たない町もあります(津野町、仁淀川町、中土佐町)。現在の自治体の危機的な財政は合併しようが、しまいが基本的に同じであり、合併したから2015年までは大丈夫、していなければ破綻というような単純化した決めつけはできるものではありません。

このように、県が自治体の将来を考えるために真剣に議論を呼びかけるというのであれば、新法期限内の駆け込み強要は、住民の議論を阻害するものといえます。(つづく)