2007年5月13日

核ゴミ問題 高知県内でなぜ頻発 誘致の震源は山本有二大臣だった 中谷元氏と「核燃料サイクル」推進団体の役員も

「意見交換会」での山本有二議員の発言要旨、県が作成した「意見交換会の概要」から
大月町、旧佐賀町、津野町、そして東洋町。ここ数年、県下各地で高レベル放射性廃棄物最終処分場をはじめとする放射性廃棄物関連施設の誘致が大きな問題になっていますが、この問題をたどると県内選出の自民党国会議員の影が見えてきます。その国会議員とは衆院高知3区の山本有二・金融チャンレンジ大臣と衆院高知2区の中谷元衆院議員。

2005年4月21日。東京の都道府県会館で県選出国会議員と県幹部の意見交換会が開かれました。出席者は、福井照、中谷元、山本有二衆院議員、田村公平参院議員(自民)、石田祝稔衆院議員(公明)、五島正規衆院議員(民主)、広田一参院議員(無所属)。県側は中沢卓史総務部長、十河清企画振興部長、久保田一水土木部長など県幹部9人(肩書きは当時)。

県側は意見交換を通して「三位一体改革」による地方財政の危機的な状況を訴え、南海地震対策、高速道路の早期整備、フェリー廃止問題など県が抱える重要課題を国政に反映させることを議員に提起しましたが、その場で山本、中谷両議員が以下のような発言をしていたことが、県公文書の開示請求により判明しました。

山本有二議員 高知は独立不可。他の所に必要とされることが必要。今の財政状況で何もしないのはおかしい。青森陸奥市核燃料中間管理施設、山口や島根の刑務所誘致などできることは色々検討すべき。

中谷元議員 自衛隊のヘリ誘致を高知でも考えてはどうか。米軍についても沖縄で代替地がない。宿毛、大月、三原で考えるのはメリットがあるのではないか。ただし勇気が必要。

その後、山本議員の発言そのままに旧佐賀町、津野町、東洋町で高レベル放射性廃棄物最終処分場誘致問題が起こり、いずれも地域を分断した大問題に発展した結果、住民は施設の誘致を拒否しました。自公政権が作り出している地方財政の危機的状況を棚上げに、迷惑施設を受け入れることで「他の所に必要とされる」ことをめざすべきと言い、地域社会に分断と混乱を持ち込む両議員の無責任な発言は、県民の代表失格といえます。

CNFC理事
CNFC機関誌「プルトニウム」2006年夏号
さらに調査をすすめる中で、山本・中谷両議員が高レベル放射性廃棄物最終処分場と以前から深い関係があることが明らかになってきました。

社団法人・原子燃料政策研究会(会長西澤潤一・首都大学東京学長、 東京都千代田区永田町2丁目10番2号、略称CNFC)という組織があります。1992年に創立され、「我が国における原子燃料サイクル確立の重要性に鑑み、これに係る調査研究及び政策的検討を通じて、国内外の合意形成を図りつつ、原子燃料サイクル開発の円滑な推進に資する」のが目的。

原発から出る使用済み燃料を「再処理」してプルトニウムを取り出す「核燃料サイクル」を強力にすすめ、プルトニウムを使った発電の推進、高レベル放射性廃棄物最終処分場建設の世論工作を担う先兵役としての組織です。このCNFCの理事に組織の発足直後から山本・中谷両議員は名を連ね活動してきました。

2006年秋のCNFC役員で現職の国会議員は、副会長・津島雄二衆院議員(自民、衆院青森1区)、理事・江渡聡徳(自民、衆院青森2区)、大島理森(自民、衆院青森3区)、大畠章宏(民主、衆院茨城5区、日立労組出身)、田名部匡省(自民、参院青森地方区)、渡辺周(民主、衆院静岡6区、旧民社党)に加え、中谷元(自民、衆院高知2区)、山本有二(自民、衆院高知3区)だけ。2007年現在は「山本先生は現在、閣僚入りしているので、会員のまま一時的に理事は外れている」(CNFC事務局)。

六ヶ所村をはじめ「核燃料サイクル」に深く組み込まれている青森県の出身議員、電力産業と密接な関係がある旧同盟労組を母体とする議員と肩を並べて、原子力関連施設がなく原発産業とも縁の遠いはずの高知県出身議員が2人も理事になっているのは、いかにも唐突。2人が「核燃料サイクル」完結に不可欠な最終処分場推進が「任務」であることが容易に想像がつきます。

高知県下でなぜ放射性廃棄物施設誘致問題が頻発し、自民党高知県議団は東洋町での最終処分場建設にむけた文献調査に反対できなかったのか(認可に慎重な取り扱いを求めるにとどまった)。自民党県連の現会長、前会長が「核燃料サイクル」推進団体の役員を務めていることとの関係をしっかり見ておく必要があります。(2007年5月13日高知民報)