2007年3月11日
高知市が「児童館」指導員を増強 増員2館の距離わずか100メートル 同和行政終結に逆行
南横児童センター(上)、宮寺集会所(下)。両館はわずかしか離れていない
同和行政の根拠となる法律が失効しても県下で唯一同和対策課を残し、「同和行政」を継続してきた高知市で、法失効5年目を迎えての事業の見直しの中で、旧同和地区だけにある「児童館」職員を増強する予算を来年度計上していることが判明しました。「同和行政」終結に向けての「見直し」の中で、削減ではなく、人員を増やすという非常識な市政への批判は避けられません。
高知市の「児童館」は同和行政の産物で、「市民会館」とセットになって基本的に旧同和地区内だけ11館(うち2館は集会所を使用)が存在しています。設置根拠は「長欠、不登校、進路保障の問題など依然として地域間格差が認められる」(同和対策施策の見直しについて 平成19年2月)。旧同和地区内外に線引きをしたり、対象になる児童生徒を特定する根拠も定かでないままに、「依然格差がある」として一部の児童生徒を特別扱いしているのが現状です。
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予算増額
児童館の指導員(厚生員)は非常勤の市職員で人件費は全額市負担。18年度は17人体制でしたが、19年度からは20人体制に増員されることになっています(この他に5人臨時職員の加配を配置)。19年度から管轄は同和対策課から市教委人権教育課へ移管します。
「児童館」を利用しているのは旧「解放こども会」で、小学校低学年は、登録した子供は、ほぼ毎日下校後に通い、実質的な無料学童保育と化しています。また中学生には、テスト対策を夜間教師が児童館に出向いて行っています。
「子ども会」の活動費もすべて市負担。「祭り」などイベント費用、遠足のバス代、行事のおやつ代、行事参加のためのタクシー代まで税金で支払われており、一般の子ども会では考えられない厚遇ぶりです(19年度の活動費は約350万円を計上)。
「子ども会」の名称は外部的には「解放」を外していますが、内部では未だに「解放こども会」を名乗っている会も多く、館内には「解放こども会の歌」の歌詞を大きく掲示しているような実態があります。「児童館」運営の経常的な経費での市費持ち出し分は18年度は約6500万円でしたが、19年度予算では7500万円(高知民報調べ)へと増額しています。
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条例規則上も不透明さが
各1人づつ指導員の増員が予定されている南横児童館と宮寺集会所の距離は直線でわずか100メートルほどしか離れていません。市教委人権教育課は「複数配置するために増員が必要だ」と述べますが、児童館とは児童福祉法で「遊び場を提供する」ために設置されているものであり、旧同和地区内の「子ども会」指導にだけ学区ごとに市費で指導員を置かなければならない理由は見あたりません。しかもわずかな距離しかない2館を統合ではなく、双方に人員を複数配置して強化するなど、現在の高知市の危機的な財政状況からみて到底考えられず、「同和だけは特別」という市政の体質が露呈しています。
今回増員される指導員は、南横(児童館)、宮寺(集会所)、豊田(集会所)に配置されることになっていますが、集会所における「子ども会」の指導に指導員(児童厚生員)」をあてることは現在の条例・規則上も不透明さがあります。児童厚生員は、「児童館の円滑な運営を図るために設置」されていると規則で定められています。条例で定められた「児童館」は9館(一宮、長浜、朝倉、介良、河ノ瀬、小石木、南横、西山、小高坂)だけ。集会所での「子ども会」指導に市費で指導員を置く根拠はどこにあるのでしょうか。条例・規則上も不透明さがある集会所への人員増は許されません。
旧同和地区だけを厚遇する「児童館」は廃止し、必要ならば一般の「放課後児童クラブ」などに移行、不平等な特定地域だけでの生徒への加力指導は即刻中止すべきです。