2007年3月4日

百条委 矛盾だけの「クロ認定」 2月県議会 

2月22日の県議会本会議
2月22日、県議会2月定例会の開会日、昨年12月議会で地方自治法百条にかかわる権限を付与された産業経済委員会(中西哲委員長)の県漁業信用基金協会への出資金に関する問題の調査結果が本会議で報告され、自民・公明・県政会・県民クラブの賛成多数で「承認」されました。日本共産党と緑心会の吉良富彦議員、新21県政会の二神正三議員が反対討論を行いました(吉良議員の反対討論は後述)。

報告は「平成12年度以降の出資は保証の見返りであると判断せざるを得ない」、「知事の責任は極めて重い」という自民党らが昨年4月から主張してきた「疑惑」を、証言の都合のよい部分だけつまみ食いして一方的に追認するかたちになっているものの、基金協会側に保証の担保という認識が全くなかったことや基金協会への出資そのものには全く問題はないと記述するなど、報告書自らがあるとする疑惑と相反する記述が何カ所も出てくる矛盾した文書になっています。

委員会調査の中では、疑惑の核心である「組織決定」を証明できるはずの証人や、報告書が責任は重大であるとした橋本大二郎県知事の尋問を自民ら多数会派が多数決でなぜか頑なに拒否。報告の取りまとめでも補強・修正を求める少数会派にまともに発言もさせないまま、強引に多数決で押し切るなど多数会派の党略的な非民主的な運営が随所に露呈。百条委の権威に関わる重大な汚点を残しました。

吉良富彦議員の(日本共産党と緑心会)反対討論
吉良富彦議員

2月22日の県議会2月定例会開会日、県漁業信用基金協会への出資金問題について調査してきた産業経済委員会(地方自治法百条の権限を付与)の報告に対する日本共産党と緑心会の吉良富彦議員の反対討論の要旨を紹介します(見出しは編集部)。

当該百条委員会に課せられた課題は、野村俊夫・元海洋局次長が主張しているように「県漁業信用基金協会に出資した年間900万円は県信用漁業協同組合連合会が「よこはま水産」へ融資した5000万円への保証の見返りとしての出資金支出」であったかどうかでありました。

成り立たない「見返り」

11年5月7日に野村元次長から保証要請を受けた時の様子について文書で回答を求められた前基金協会専務理事の中西憲三氏は、「結城水産振興課長補佐からよこはま水産(株)の状況と保証要請の話があり、理事長が立ち上がったとき、野村海洋局次長が唐突に担保に出資金を出すと言うような話があった。県の出資金は担保にならないと思い、話を聞いていた。場所は基金協会、時間は午前、聞いたのは基金協会(理事長、専務)だけであり、信漁連はいない」と回答を寄せています。

このことは、基金協会側の最も実務に精通した人物が、融資するということと出資の申し出はなんら関連性がなく次元の違う話であり、いわんや「見返りとしての出資」は出資金の機能上成り立たないと考えていたことを裏付ける重要な発言であり、細木敏雄・前基金協会理事長が、出資金が「損失補填」になるかのような野村氏の発言について「実務をしていない人が考えること。とにかく保証と出資は筋が違う。出資は保証の担保にはならない。何いいよらあという感じ。そういうことで聞き流した」と、県監査委員の調査や百条委員会で証言していることとも一致するものであります。いくら野村氏が「見返りの出資」だと述べても、そういうことはシステム上ありえず、まさに一人合点、思い込み以外の何物でもない事が明らかになったのであります。

また、当事の串間正章・水産振興課長も結城補佐も、「見返り出資」については述べておらず、「出資金は基金協会の基盤強化のために必要であり『よこはま水産』のことがあってもなくても出資していた」と、「見返り出資」論を否定。結局「見返り」としての出資金であると言っているのは、野村元次長のみであるにもかかわらず、報告書案では、串間証言のことにも一言も触れず「海洋局が出資の約束が合意事項であったと認識していたと考えるのが常識的な見方」と海洋局全体がそうであったと断定していることは容認できません。

しかし、当事の野村元次長らは「見返り出資」というスキームを思い込み、財政当局に予算化を要求しています。このことはその認識のありようにおいてもその行動においても県民利益に反するものとして重大であると、厳しく指摘せざるを得ません。

■「組織決定」

野村元次長と結城元補佐は、このような自らの行動は「組織決定」であったと述べ、あたかも県全体の認識、責任であるかのような提起をしています。

野村元次長は初め、組織決定は5月4日であり、その物証だとして極秘メモなるものを出してきました。しかし、後日、結城元補佐の言葉をもとにして6日と訂正したが、その重要な6日が先に提出された極秘メモには記されておらず、極秘メモ作成を指示したと野村氏に言われた星沢海洋局長は真っ向から否定しているものでもあります。

6日に出席していたと名前を挙げられた証人は全員否定し、その上6日を確定するに必要な重要証人喚問を、私どもが求めたにもかかわらず当委員会は多数で拒否し、解明を放棄するなど、組織決定との判断を当委員会が下すことは出来ないままで終わらせてしまったのであります。

知事の責任

少なくとも当事、野村元次長が「見返り出資」との認識を持ち組織決定を迫っていたことは今回の調査でも明らかとなりました。しかし、県の財政当局や知事の組織としての判断は、この認識とは全く異なっており、出資の必要性の認識が全く違っていた点も改めて今回明らかにされました。

出資については当事の森光稔・元海洋局長の「11年5月7日以降知事は一貫して、融資にからめた出資は認められないと述べており」との証言や、同年5月17日に「解同との関係など、今までの経過もあるが、今後のよこはま水産に対する対応については企業におけるビジネスの話として処理していく」との知事の言質や、監査結果で「知事査定の場で野村海洋局次長が主張する見返りの出資ということが認められていない以上、出資金の支出の原因行為とは認められず」と指摘している12年2月3日の12年度予算知事査定の場での当時の財政部長や知事発言などからも、当初から一貫したものである事実が確認されたのでありす。

組織のトップである橋本知事が「見返りはしてはならない」と一貫して機会あるごとに述べているという確定的な事実を記載しないまま、「知事の責任は重い」などと、私が求めた知事の証人尋問を拒否しておきながら述べていることは、容認できないものであります。

出資の公益性についての審議については、ルール改正を知らなかったことは極めて問題でありますが、本報告の「おわりに」で、「基金協会への出資そのものが問題であるという考えはいささかもない」と述べるにいたっては、一体何のための百条だったかと、百条の設置そのものの意義が問われることとなります。

■先行した政治的思惑

そもそも、「よこはま水産」問題は、わが党が平成9年度から追及し、ついに平成13年度の集中審議へと導く中で、県海洋局が「反省点と今後の対応」で述べているとおり、「同和対策の地域改善対策特別措置法の期限が迫っていたことから、販路等計画性の検討が十分でないまま県として、事業採択したこと、その建設について、関係団体の強い要請があったとしても行政の主体性を欠いた対応があり、大いに反省し重く受け止めている。同和対策事業の重要な性格を有していたとしても、金融機関や県外関連企業への文書による協力依頼など、一民間企業への県の偏った関与については深く反省する」と、設立当初からありえない支援、融資をさせてきた主体性を欠いたゆがんだ同和行政が根本原因であり、そのことを県議会も認め、同和行政を終結した時点で決着が付いていることです。

今回の百条委員会は、意見の違う証人をよぶことを最初から拒否し、組織決定を裏付ける重要証人や知事などの喚問も拒否するなど、徹底解明に後ろ向きな姿勢に終始し、そのあり方は極めて問題でありました。本報告案を審議する際にも、証言の加筆や、訂正を求める私どもの意見に聞く耳持たずの姿勢であり、少数意見を全く反映することなく原案を押し切った事は、百条委員会の歴史に汚点を残すこととなるでありましょう。

解明しようとする事項の内容と経過から言って、百条委員会の設置自体必要はなく、まず当該常任委員会において、その執行に至る経緯や当時の担当者の調査を初め、必要な資料収集や論理構成などしっかり行い、県民に責任ある説明を先ずすべきであったとの考えに間違いはなかったものと考えるものです。

結局、「全てにおいて野村元次長の証言を採用したが、多くの証人が否定する中、その野村元次長の証言を採用した根拠はあきらかにされていない」と、全国紙が報道したように、結論においても徹底解明などには程遠く、多くの県民が疑問を持つ内容となっているものです。これらのことは百条委員会そのものが「はじめに結論ありき」の政治的思惑設置されたといわざるを得ないと、最後に強く指摘し、委員長報告に対する反対討論とします。