2007年3月4日
高知市が旧同和関係者7048人の低位性を調査 対象特定の根拠なし 個人情報乱用の疑いも
7048人の「部落民」は市民会館を通じてピックアップされた
同和行政の根拠となる特別措置法が失効してから5年、高知市は現行の「同和行政」を依然継続する方針を固めていますが、その議論の過程で、旧同和地区と地区外の格差を明らかにするために、旧同和関係者7048人の低位性を市が調査していたことが明らかになりました。
この調査は平成19年度にむけた同和行政「見直し」の準備の中で行われたもの。13年以降は法失効にともないこの種の調査は実施されていませんでしたが、19年度以降の事業継続の根拠とする数字を捻出するために取り組まれました。
市が根拠となる法令もない中で、勝手に市民を「部落民」として分類・集計し、その低位性をあぶりだすなどということは、人権侵害につながる重大問題で許されることではありません。
県人権課では「土地や人を限定する特別対策の法律がない中では、旧地区内外に線を引いたような事業や調査はやってはならないと考えている」との見解。同和行政に詳しい関係者からは「高知市はまだこんなことをやっているのか」と驚きの声があがっています。
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79・7%
2月16日の「高知新聞」に、高知市の「同和行政」継続に関連して同和団体等への「仕事保障」としての随意契約についての記事が掲載されました。記事中「市によると昨年の同和地区の平均年間所得は233万8000円と市平均の79・7%で、生活保護率は3・3倍」などという地域内外の「格差」の詳細なデータが引用されており、記事を書いた記者は「市に地区内外の格差について書かれた資料を見せてもらった」と述べました。
高知市はこれまで、この種の調査とデータの存在を認めておらず、今年2月1日に行われた「平和と生活を守る高知市民共闘会議」の対市交渉の際にも、旧同和地区内外の「格差」の根拠について問われた同和対策課職員が「具体的なデータはない。地区内は公共事業に頼る割合が高いことから想像される」と回答していました。この矛盾を同和対策課に質問したところ、「調査はしていたが、2月1日の時点では公表の決済が下りておらず、あのような言い方になった」と説明しました。
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調査方法
同和関係者の低位性についての市の調査データの存在が明らかになったのは、13年以降初めてのことです。同対課に調査の具体的な手法や考え方について取材しましたが、担当職員の歯切れは悪く、「正式な回答は上と相談しなければならないので3月市議会まで待ってほしい」と述べるにとどまりましたが、その中で確認できたことは、@調査の分母は市民全体の平均値、A分子は市民会館周辺の住所の市民の中から、これまでの経過から市民会館が関係者と認識している「属人」である7048人をピックアップして抽出、B集計した同和対策課では統計的なデータのみの集約であり、個人名等は把握していないという3点。
高知市では、過去の同和行政の対象者について、旧地区内に居住している「属地」だけでなく、さらにその個人が関係者であるという認定を必要とする「属地・属人主義」をとってきていました。最近は、地区内の混住が急速に進行し、住所だけでの比較では「部落の低位性」を証明できないことから、「属人」を抽出する必要があったと思われますが、そうであれば、どのような手段で旧同和関係者を把握、特定することができたのでしょうか。
同対課は「市民会館が把握している過去の経緯を考慮した」などと述べていますが、具体的な調査方法については明らかにしていません。方法によっては市民の個人情報の目的外利用にあたる疑いもある重大な問題です。「79・7%」は、市が今後3年間、「同和行政」をこれまでと同様に続けると判断した唯一の根拠となる重要な数字であり、その導き方を市民に説明できないなどということがあるはずはありません。市の説明責任が厳しく問われています。