2007年2月18日

県「基金協会出資金は適法」 返還・差し止めを否定 県監査委員に回答

県監査委員が昨年12月8日、県漁業信用基金協会への県の年間900万円の出資金は「違法不当」であり返還・支出差し止めを求めると勧告した住民監査請求への監査報告に対し県は9日、「適法であるため、勧告された措置は行わない」との文書を県監査委員事務局に発送しました。

県海洋局が出資を適法であるとしている理由のポイントは以下5点。

@協会の設立目的 全国で42の基金協会が保証業務を行っている。中小漁業融資保証法に基づき設立されており、県国の関与も明確に位置づけられた公共性の高い団体として漁業融資制度の維持に不可欠な業務を実施。

A県の出資目的と出資額 協会の経営基盤強化を目的に昭和28年以来出資を行い、昭和42年から平成17年までの39年間一年も欠かすことなく出資を継続してきた。年間の平均出資額は約1300万円、出資総額は5億8000万円になる。平成7年からは国の融資制度枠増額に対応するため経営基盤強化に加え3億6000万円の保証限度額に対応できるよう継続的な出資を実施。

B全国の状況 高知県の出資総額は全国10位。海面漁業生産額が全国6位の本県水産業の状況に見合った適切な支援内容になっている。

C国などによる支援 国は昭和49年から県を通じて出資補助を実施し、補助合計は約1億200万円。国が100%出資団体である上部団体農林漁業信用基金は18年度も7億8000万円の低利貸し付けで支援している。

D県による出資の必要性 基金協会の公益性と国・県・市町村の役割から県の継続的な出資は高い公益性があり、適切である。

県海洋局は、水産庁通達を見落として保証限度額の算定金額が誤っていたという事務的ミスについての指摘は認めながらも、それで出資の必要性が損なわれるものではないとし、さらに監査報告の認識不足や事実誤認を指摘して「違法不当」とする監査報告に真っ向から反論した内容になっています。

基金協会という極めて公益性の高い団体への県の出資を「違法不当」とした今回の監査報告については、「同じような支援策はたくさんある。これが違法といわれたら、県は仕事などできない。県と同様に出資してきた市町村や国も違法不当なのか。監査は何をやっているのか」という声が県庁内外からあがっていました。今回の報告は住民監査請求によるものであることから、最終的な決着は住民側が起こした訴訟の結果に委ねられることになります。

「闇」にこじつけ

監査報告に対する県の対応について「高知新聞」は、「闇保証疑惑」と見出しを付け、リードでも「『よこはま水産』(旧幡多郡佐賀町、事実上倒産)をめぐる県の闇保証疑惑に関連し」などとして、今回の監査報告書が同紙が独自に大キャンペーンを張っている「闇保証疑惑」との関わりがあるかのような書き方をしていますが、まったく事実をゆがめるものです。

監査報告の柱は@野村俊夫・元海洋局次長が主張している「見返り出資の約束」があったか否かは当事者の説明に意見の相違があるが、仮に合意があったとしても契約の締結ではなく、かつ出資金支出の原因行為とも認められず違法性を論じる余地はない。A900万円の予算を算定する時に用いた数字に誤りがあり、正しい数字を用いれば予算化する必要はなかった。融資に漁業者のニーズはなく、経営基盤強化のための出資の必要性はない。故に公益性に欠ける裁量権を逸脱した違法不当な公金の支出である。という2点。

つまり「見返り出資」があったか、なかったかということとは関係なく、純粋に出資金の公益性について論じた結果としての報告になっています。監査報告がさも「闇」の構図を認めて「違法不当」としているかのような誘導的な記述はフェアな態度とは言えません。