2007年2月18日
いつまで続ける同和行政 「見直し」するもほとんど手つかず 高知市
人権啓発課と統合される次年度も「同和」の名は県内で唯一冠されることに
同和行政の根拠とされていた特別措置法が平成13年末で失効してからも同和対策課を残し、旧同和地区住民を特別扱いする同和行政をすすめてきた高知市は19年度にむけて法失効後5年目にあたっての見直し作業を行っていますが、一部の手直しはするものの、市民会館・児童館の運営、随意契約による「仕事保障」、同和向け住宅での配慮という4本柱の同和対策をすべて残存させる方向を固めました。
今回の同和行政の「見直し」のポイントは、同和対策課と人権啓発課の統合(呼称は不明だが「同和」という名は残る見通し)、子ども会運営の教育委員会移管、今後の見直し期間は3年後とすることなど。
「仕事保障」では、地域内の生活水準が一定改善されるまでの間、随意契約を継続するとし、単価や総額の縮小などの含みは残しつつも、基本は変わっていません。
「市民会館」については、センター的機能を持つ中核館など館機能の集積化が打ち出され一部の館の人員体制の縮小を示唆していますが、大きな変化は見られません。
同和向け住宅の募集等での同和行政終結の流れに逆行する特別の配慮(抽選から市民会館の意見を付した選考に年度途中で変わった)は、すでに昨年10月から実施済み。募集に関する情報を市広報には掲載せず、旧同和地区内でしか配布されない「市民会館だより」だけにしか載せないという扱いもこれまでと同様のものです。
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「子ども会」が教委に
今回の「見直し」で著しい逆行現象が見られるのが「児童館」です。「児童館」は「市民会館」とセットで旧同和地区だけに存在しており、市費で運営されている「子ども会(解放子ども会)」が独占的に利用しています。実態的には低学年では無料学童保育と化し、中学生に対しては特別に試験対策勉強を市立中学校の教師が行っていますが、これらの「子ども会」運営を、市民生活部から教委人権教育課に担当課を移し、更に充実・強化するとしています。
「子ども会」の所管が市民生活部に移った経緯は(平成10年から)、特定の地域の児童生徒だけに勉強を教えるのはおかしいという批判があったため。以来市教委は「勉強は学校で教える。子ども会は社会教育の場であり学校の勉強はやらない」と繰り返していましたが、昨年10月30日の部落解放同盟高知市協の対市交渉の場で「子ども会につきましては、一人ひとりに学力を身につけさせ、将来の進路保障へつなけていく取り組みが求められている。併せて自分の生まれた所を自慢できる子どもを育てる活動が強く望まれる」と回答するなど、深刻な困難が広がっている児童生徒の中で、「子ども会」の児童生徒に線を引いて対策を打つことを肯定する構えを鮮明にしています。
同じ学校の児童生徒であるにもかかわらず、市教委が一部の地域の児童生徒を特別視することは極めて非教育的であり、市民の批判は避けられません。
■特別対策の限界
同和団体への随意契約による「仕事保障」や「市民会館」・「児童館」を存続するという判断の背景には、「地域では失業や廃業が著しく、市内の他地域と比較して所得が約8割であるなど、より厳しい生活状態に置かれている。教育においても長期欠席・不登校、進路保障等の問題など、依然として地域間格差が認められる」という高知市の現状認識があります。
高知市はこれまで旧地区内外に線引きをした調査はしておらず、データはないと述べてきており、何を根拠にして格差があるとしているのかは不明ですが、公表していないデータを密かに持っているとすれば、大問題です。
また仮に過去の経過から一定の格差が実際にあったとしても、これまでと同じ対策を漫然と続けても、効果がないことは、すでに実証済み。肝要なのは、住民の自立に向けた取り組みであり、いくら無償サービスや随意契約による特別扱いを続けても、同和対策への依存が続くだけであり、かえって自立の妨げになっているのが現実です。