2007年2月15日

「疑惑のシナリオ」を自民らが強引に採決 偽証告発は腰砕に 県議会百条委

充分な討議を保障しないまま強引に採決(2月15日)
県が平成12年から18年度まで予算化した(18年度は未執行)県漁業信用基金協会への年900万円の出資金について調査している県議会産業経済委員会(中西哲委員長、百条委権限付与)は2月15日、百条委として取り組んできた調査結果の報告のとりまとめを行いましたが、報告書の内容に対する補強・修正意見を妨害し、まったく耳を貸さないまま強引に採決するという極めて非民主的なやり方で、「平成12年度以降の出資は保証の見返りであると判断せざるを得ない」、「知事の責任は極めて重い」という内容の報告を多数でゴリ押しました。

今回の報告は、1月24日に「組織決定」の存在を証明する上で決定的だった証人尋問を多数決で拒否したことに象徴的にあらわれているように、事実をまじめに解明するのではなく、はじめから多数会派が描いている「疑惑のシナリオ」を数で押し切ったものと言わざるを得ないものです。

報告は基金協会側が「見返り」という認識を全く持っていなかったこと、県の内部でも知事・財政課と海洋局に認識の大きなズレがあったこと、出資金そのものには何ら問題はないと弁明していることなど、「疑惑」とは相容れない重要な記述がある一方で、事実に基づかない一方的な断定など多くの問題点があります。中心的な問題をいくつか見てみます。

@串間証言「よこはまがなくても、この出資は必要であった」を採用せず 百条委の証人尋問で平成11年当時、海洋局水産振興課長だった串間正章氏が出資金の性格は「見返り」ではないと明確に述べている重要な証言であるにもかかわらず無視し、報告に記載せず。

A「よこはま水産」資金ショートの原因 報告書は都築弘一・元海洋局次長の逮捕だけが、資金ショートの原因であるかのように矮小化しているが、操業直後から資金繰りに行き詰まるなど、もともと歪んだ同和行政による無理があったことは明白であり、都築問題は一つの要因に過ぎない。

B「組織決定」の使いわけ 決定の日時が特定できていないのはもちろん、その内容についても曖昧模糊としている。最初は「融資と保証」がその内容であったが、まとめ・結論部分では「保証の見返りとしての出資」へと飛躍している。

C野村元海洋局次長個人の認識が、海洋局全体の認識であるかのようなゴマカシ 出資は「見返り」だったと述べているのは野村俊夫・元海洋局次長であり、結城勢賢・水産振興課補佐、串間・水産振興課長がともに「見返り」を否定しているにもかかわらず、海洋局全体が「見返り」という認識で動いたかのような記述が随所に見られる。

D副知事のゴーサイン 河野元副知事の否定により、全く明らかになっていない副知事のゴーサインを、あたかも動かしようのない事実であるかのように決めつけ、独断をエスカレートさせている。

E知事の姿勢を無視 組織のトップである橋本知事が「見返りはしてはならない」と一貫して機会あるごとに述べているという確定的な事実を記載しないまま、「知事の責任は重い」などと、知事の証人尋問を拒否しておきながら述べている。

この日の委員会は、委員会の当日直前に配布された報告書案に対して各委員が意見を出して討議し決定することが目的でしたが、自民党の中西委員長と土森正典委員は、吉良富彦委員(共産緑心)などの修正・補強を求める発言を保障しないまま強引に採決し、後味の悪さを残しました。

中西委員長は、「それはここで言ってもしょうがない」「もういいでしょう」などと吉良委員の発言を何度も途中で遮り、土森委員は「いちいちやるがかえ、終わらせんぜ」、「あんた1人の委員会ではない」、「長い、手短に」、「もう終わったろ、まだかえ」などと執拗に発言を妨害。少数意見を報告に反映していこうという姿勢はみじんもなく、採決を急がせ、一字一句修正をせぬまま露骨に数で押し切りました。

議会は、言論をたたかわせる場であり、かつ強力な権限を有する百条委であるからこそ、少数意見に配慮した公正な委員会運営が求められていたはずですが、証人の決定から報告書の取り扱いに至るまで、2003年の「選挙資金疑惑」の時の百条委員会でも見られなかった、お粗末きわまりない委員会運営がまかりとおりました。

またこの日の委員会では
偽証告発についての討議を秘密会で行っています。中西委員長はこれまで、河野元副知事や現職県職員などを告発する手はずであると述べていましたが、告発は見送り。不発に終わりました。今後は2月22日に開会する2月県議会初日に同委員会の報告が提案され、採決される予定です。