2006年12月10日

ホントに必要?高知駅前複合施設 利便性・コスト削減疑問 メリットどこに

複合施設のイメージ。高知市提供の模型画像を加工したもの。広場の配置は変更している
老朽化等のため整備が急がれている県立大、図書館、文化ホールの3施設を合体させた「複合施設」を高知駅前に建てる計画の是非をめぐる議論が活発化してきました。県は3施設をそれぞれ単独整備した場合と複合施設として整備した場合の費用の概算を公表。県民アンケートともに県下各地で県民の意見を聞くために説明会を開催しています。12月2日、県庁で開かれた説明会には60人が参加し橋本大二郎県知事と意見を交わしました。

県が明らかにした建設に要する費用は、@複合施設(191億円から220億円)、Aそれぞれを改修(58〜66億円)、Bそれぞれを単独施設として整備(202億円〜274億円)。@とBを比べると、大差のない範囲で収まる可能性を示す試算になっています。県関係者にこのことを問いかけると、一様に「単なる目安で決まったものではない」とはぐらかすような回答が返ってきますが、複合化の最大のメリットとされている経費削減という最大の大義名分がぐらついています。

100メートルの壁
 
本来、性格の異なる3つの施設を駅前の狭隘な敷地(約6200平方メートル)に押し込める計画のために、県が示している案にはかなり無理があります。その最も端的なのが敷地面積と総床面積の比率を示す容積率。複合施設に入る3施設に必要な合計床面積は約44000平方メートルで、敷地の用途地域は商業地域、建ぺい率80%、容積率500%の規制がかけられており、床面積31000平方メートルまでしか認められない土地になっています。

しかし県は総合設計制度という特例措置を使い(高知市長の許可が必要)、容積率を700%に強引にアップさせて、なんとか44000平方メートルを押し込もうとしています。

しかし、その結果、高さが80メートルから100メートルにもなる巨大ビルが駅に密着してそびえ立つことに(かるぽーとは67メートル、トップワン四国が100メートル)になります。高架化に伴って新築される高知駅の景観上の最大の特徴は、木造アーチ構造の「大屋根」(高さ約20メートル)。「表玄関」である駅南口の「大屋根」や整備される駅前広場に、巨大な壁が覆い被さるように立つようでは、景観上のちぐはぐさは否めません。

今の施設を大切に

複合施設をめぐる議論の中で、既存の大学、図書館、ホールを使用している多数の利用者等の関係者から、現施設を改修して大切に長く使っていくべきではないかという声が寄せられています。

大学についての「なぜ永国寺キャンパスから出て駅前ビルに入らなければならないのか理由が分からない。グランドはどうするのか」という質問に対し、県は「大学をつくるだけなら永国寺でも構わないが、複合することによるメリットがある。グラウンドは借りるか池まで行くことになる」と答えました。しかし、大差ないコスト、グラウンドがなくなるデメリットなどを考え合わせれば複合化する理由が見えてきません。

また演劇関係者の「2000席を使う催しは滅多にない。ホールは大は小を兼ねない。現状の1500席で構わない」という指摘に対し、橋本知事が「1500席では有名タレントのコンサートが開けない」と回答するなど、採算ベースにのらない県民の文化活動を県行政が支えていく観点とは遊離した認識が示されました。

議論の端々で県担当者の口から、「現施設を改修しようと思えばできないことはないが、どうせ金をかけるならもっとよいものを」という、バブル時代を彷彿とさせる言葉が再三飛び出すのも、県民の感覚とは大きなズレがあると指摘しなければなりません。県が「よさこい高知国体」で示したように高知県の身の丈にあわせ、現存する施設を長く大切に使うという方向こそが、今求められているのではないでしょうか。