2006年10月29日
教育の成果とは何か 県教委は数値だけでなく学校の現場へ 中学校30人学級に関して
大崎県教育長と30人学級について話し合い(10月17日)
県教育委員会は公立中学校への「30人学級」導入について、現在県教委が実施している3校の研究指定(高知市立西部中、城東中、土佐市立高岡中)を来年度も存続しながら、拡大は当面行わない方針を固めていますが、その理由付けとして研究指定校の実践で「数値として成果があがっていない」と説明する場面が目立っています。少人数学級により生徒一人一人に丁寧に指導ができ大きな効果があることは実証済みであり、早急な実施は現場の教員や保護者の切実な願いです。少人数学級の成果を否定するような県教委の説明に批判の声があがっています。
10月10日、県母親運動連絡会と県教育委との交渉の場で同教職員課は「不登校、CRT、暴力行為の件数を分析したが、数値として顕著な成果があるとは認められない。数値としては成果が上がっていない」と述べ、これを30人学級を中学校に拡大しない1番目の理由にあげました。
また同月17日、国民大運動県実行委との教育長交渉でも、同課は「体感的な変化はあるが、不登校は増えている。国語・数学・英語のCRTは上がっているものもあるが下がっているものもある」など同様に数値的成果がないことを繰り返し、大崎博澄・県教育長も「中学校では小学校のように目に見える成果にまだ至っていないので、中学校に広げていくという決断はまだできない」との見解を示しました。
参加者からは「現場の実感、地教委の受け止めと全く違う。成果は出ている」、「指定校の校長は、教師と子どもが会話ができる普通の学校になり学習意欲が出てきたと言っている。この中で高校進学率が8割台から96%になった」、「数値として見えなくても大事な変化がある」、「体感は教育にとってすごく大事。この変化は大きい」などの指摘が相次ぎました。これらのやりとりの中で大崎教育長も「自分も成果がまったく上がっていないとは思っていない。財政当局を説得するに足るだけの材料がまだ得られていないと理解してもらいたい」と一定の軌道修正を行いました。
■
数字のトリック
現場の教師も保護者も少人数学級の拡大を切望しているにもかかわらず、県教委からはどうしてこのような実態と乖離した分析が出されてくるのでしょうか。ある高知市教委関係者は「県教委は一体何を見ているのか。数字だけ見ても学校の変化は分からない。学校に足を運んで生徒の姿を見るべきだ」と述べながら、数値の「トリック」について説明しました。
@不登校
県教委への報告は年間30日以上の欠席した生徒の数をカウントすることになっている。たとえば年間150日欠席していた生徒が、学校に登校できるようになり40日の欠席になったとしても数値上は変化は現れない。研究指定校ではトータルの欠席日数は減っている。
A暴力行為や器物損壊
トータルの発生件数だけの報告になっているために、問題を起こした生徒の数は分からない。現状は一部の生徒が損壊を繰り返す状況はあったが、問題を起こした生徒の総数は減っている。学校が落ち着いてきたため、以前ならカウントしていなかった軽微な事象をカウントするようになった側面もある。
と、成果が出ていないとする県教委の指摘に真っ向から反論。また県教委内にも「今出ている数値は途中経過。指定校からの正式な報告はまだ受けておらず、分析もできていない」と、現時点で早々と「成果がない」と断定することに懐疑的な意見を持つ職員も少なくありません。
地方財政が困難を極める中で、県教委は教員数を確保するために連日汗を流していますが、たとえ財政的な理由ですぐに要求に応えることができなくても、現場教師や保護者の気持ちに寄り添うことは重要です。少人数学級を根本から否定しているようでは、現場や保護者との乖離を広げ、不信感すら生みかねません。今後高知県の教育にとって重要課題となる「中学校問題」の解決にもマイナスの影響を与えかねない議論のあり方は改めるべきではないでしょうか。