2006年10月1日

行き詰まった「核燃料サイクル」 最終処分場誘致の根本にあるもの

「核燃料サイクル」のイメージ 右下の施設が地層処分をする最終処分場
県下で「高レベル放射性廃棄物」を地中数百メートルに埋める最終処分場誘致への動きが複数自治体で活発化しています。多くの住民から郷土が原発のゴミ捨て場にされることに不安の声が強くあがっていますが、この問題を考えるためには、根本にある日本政府がすすめる原子力政策の柱「核燃料サイクル(プルトニウム循環計画)」への理解が不可欠です。

 @「高レベル放射性廃棄物」とは

今、津野町や東洋町が誘致へ応募を検討している最終処分場に埋めるのは、国内の原発から出る「核のゴミ」とは違います。原発から出るゴミは「使用済み燃料」と呼ばれます。県内で問題になっている「高レベル放射性廃棄物」とは、原発から出た「使用済み燃料」から、プルトニウムとウランを取り出す「再処理」時に出る高い放射能を含んだ廃液のこと。

「再処理」は、全国の原発から出る「使用済み燃料」を青森県六ヶ所村の再処理工場(2007年正式運転開始予定)に運搬して、細かく切断して硝酸溶液に溶解してウランやプルトニウム成分を抽出するピューレックス法という方法がとられます。「再処理」工場は1日運転すれば原発1年分の放射能が出ると言われ、大気・海洋中に放射性物質を直接出すなど、非常に危険な施設で大きな問題を抱えています。

 A使い道のないプルトニウム 

政府は「再処理」と「核燃料サイクル」の目的を、「使用済み燃料」からプルトニウムを取り出して再び発電に使用するリサイクルでウランを節約するためとしていますが、現実には、この目的は意味を失っています。

「核燃料サイクル」技術の核心は高速増殖炉で、プルトニウムを燃やすと消費した以上にプルトニウムを再生成する「夢の原子炉」と言われていましたが、1995年に福井県敦賀市の「もんじゅ」ナトリウム漏れ事故で計画頓挫(2008年に運転再開の準備をすすめている)。アメリカ、イギリス、フランスなどでも高速増殖炉から撤退する動きが相次いでいます。

現在日本が持っているプルトニウムは約40トン。プルトニウムは核兵器への転用が容易にできるため、核拡散防止条約(NPT)により、プルトニウム単独で持つことが禁じられており、日本政府にとって、プルトニウムを減らすことは焦眉の課題です。

そこで高速増殖炉実用のメドがまったく立たない中で、使い道のないプルトニウムをなんとか消費しようと懸命に推進しているのが、通常原発でプルトニウム入りの「MOX燃料」を燃やすプルサーマル計画ですが、この計画にも反対が相次ぎ、四国電力や九州電力で近く開始される見通しとはいえ、多くの曲折が予想されます。

このようにプルトニウムの使い道が見えないにもかかわらず、プルトニウムを作る「再処理」の推進は辻褄があいません。そもそもプルサーマルをやっても、リサイクル効果はごくわずかであり、一方で新たな放射性廃棄物が大量に生じることから、「意味がない」という指摘もあります。

 B「核燃料サイクル」に固執する日本政府

このような状況の中、莫大なコストをかけ「再処理」をし、使い道のないプルトニウムと大量の高レベル放射性廃棄物を発生させるより、「再処理」をせず、「使用済み燃料」のままで処理する「直接処分」のほうが、廃棄物の量も少なく、低コストで合理的であるという考え方が、最近強く出てきています。

「核燃料サイクル」に要する莫大な費用は、電気料金や税金で国民が負担しなければならないものであり、原子力発電をやむを得ないと考えている人でも、「再処理、核燃料サイクル撤退」という要求では一致点をつくることが可能です。

日本政府は現在、批判に全く耳を貸さず「核燃料サイクル」に固執していますが、「再処理」に血道を上げているのはフランスなどごく一部の国だけで、日本は世界で孤立しています。このような状況下で、自治体が交付金目当てに「高レベル放射性廃棄物最終処分場」に飛びつけば、破綻している「核燃料サイクル」の延命に手を貸すことになります。

まずは「核燃料サイクル」に固執する政府の原子力行政の見直し、電力会社の廃棄物排出事業者としての責任の明確化、当面「使用済み燃料」を電力会社の責任で原発内に厳重に保管させ、より安全な処分方法を探求し、国民的な合意を得る努力、既存原発の段階的廃止などを求めていくべきです。