2006年9月10日

特集「よこはま水産」問題 県議会産経委の調査終結 9月議会にとりまとめ 元海洋局次長の「自己弁護」に終始
7月12日の県議会産業経済委員会
県海洋局が平成12年から18年まで県信用漁業基金協会に実施した年900万円の出資(18年度は未執行)は「よこはま水産」に関連した「闇保証」であり、県の隠蔽体質が今日も続いていると自民党らが追及していた問題で、8月28日に開かれた県議会産業経済委員会(中西哲委員長)は、調査を終了し9月14日の集約のための委員会を経て、9月20日の9月県議会初日に報告することを確認しました。

この問題は4月、自民党が12年から18年度まで県が県信用漁業基金協会(基金協会)に出資した年間900万円は、11年5月に県信用漁業協同組合連合会(信漁連)が県の要請を受けて実施した「よこはま水産」(旧佐賀町、社長は村越久佐夫・当時の部落解放同盟県連副委員長)への5000万円の融資の見返りとしての「闇保証」だと指摘したことが発端でした。

その後、野村俊夫・元海洋局次長(現県建設技術公社理事長)が自民党の指摘を「裏付ける」証言を行ないましたが、一方で執行部は、「出資と『よこはま水産』は無関係。出資は基金協会の体質強化と国の新たな融資制度に対応するための計画的増資で、これが組織決定」と真っ向から反論。野村氏自身も結果的には、執行部の見解を認め、出資と「よこはま水産」は別というのが県組織の意思であることを認めています。

5カ月間にも及び、膨大な労力を消費してきた今回の「調査」ですが、「疑惑」を何ら証明することができませんでした。歪んだ「解同」追随の同和行政が跋扈(ばっこ)していた11年当時の野村氏の立ち回りの「自己弁護」以上のものはなく、このような代物に「付き合って」大騒ぎした自民党県議団、また当初「疑惑」をセンセーショナルに煽った高知新聞の責任は重大と言わなければなりません。

ぶれる野村証言 組織決定は4日→6日→やっぱり6日?

8月28日に開かれた県議会産業経済委員会(中西哲委員長)には河野八朗・元副知事、野村俊夫・元海洋局次長の新たな証言文書が提出されました。河野元副知事は、自身が「組織決定」へゴーサインを出したと野村氏が述べていることを全面的に否定。また野村氏は「組織決定」したとされる会合の場面を二転三転させる動揺ぶり。星沢昭雄・元海洋局長からは野村氏の証言は「自分に都合の良い思い込みを述べているに過ぎない。牽強付会(都合のよいこじつけ)も甚だしい」と指摘する文書が提出されました。

河野元副知事は組織決定の判断を下したのか?

これまでの野村元次長の証言では、「組織決定」は平成11年5月4日に河野元副知事が行ったとされていました。「よこはま水産」救済の3つのスキーム@直貸、A信漁連に大型貸し付けをしてその金利差で運用する方法、B基金協会への出資という3案を野村氏が河野副知事に示し、河野副知事がBを「指を指した」、「副知事が組織決定だと言いました」、「副知事に組織決定ですがいいですかと念押しした」などと述べています。

しかし8月28日に明らかになった河野氏の証言では「4日にそんな案があったように思いませんけんど」、「そんな大事な話、記憶にないはずはないですけどね。どうしてそんな話になるのか不思議」、「そんなことは僕は言ってませんよ。そういうのをいきませんよというのを僕は言うたわけで」など野村氏の主張を真っ向から否定しました。4日には何も決まっていないという河野元副知事の証言は、「よこはま水産」への直貸しを要求した森光稔・元海洋局長と河野氏との間で激しい口論になり、要求を聞き入れてもらえなかった森光氏が怒って部屋を飛び出したという多くの証言の状況とも一致するものです。

組織決定はいつなのか?

野村氏が主張している「組織決定」が事実であるならば、それはいつなのか。野村氏の発言をみると肝心要の「組織決定」の場面が二転三転しているのが目立ちます。

野村氏は6月23日に産経委に公表された事情聴取文書では、河野氏が決定を下したのは5月4日であると明確に述べていました。しかし7月12日の産経委に出頭した野村氏は「5月4日に一定の方向づけがなされ、6日にゴーサインが出された」、「5月6日に方向付けが固まった」と、決定は6日であると変更。

ところが8月28日に産経委に公表された野村氏の事情聴取文書では「5月4日にスキームが決まっておった。6日については(略)確認をした場」「(6日は)まあ添えたという感じ」と、またもや4日に重点が移りました。河野氏は4日以外に野村氏とは会っていないとはっきり証言しています。野村氏の主張は、矛盾点を指摘されるたびに、核心部分がぶれているのが実態です。

中西委員長 強引に審議打ち切り

8月28日の委員会で中西委員長は新たに出された証言について「目新しいものはない」と内容に踏み込むことを回避したまま、そそくさと委員会調査を終結し、まとめる方向で委員会を打ちきりました。8月11日までは土森正典委員(自民)が「百条委を設置すべき」とくり返していたことからも、強引ともいえる審議の打ち切りは自民党委員からも戸惑いの声が出るほどでした。

野村氏の証言の核心部分が二転三転し、唯一の「物証」として提出された「極秘メモ」が出所不明だったり、野村氏自身が自ら修正していたりと、調査を重ねるごとに野村氏の主張の信憑性に疑問が生じるなかで、委員会審議を長引かせるより、早く打ち切って「灰色」という調査結果に持っていくほうが得策であるというのが自民党県議団の判断と思われます。

予算執行停止 議会に権限なし

「高知新聞」は「委員会調査の結論次第では自民党が予算の執行停止を求める」と報じていますが、「闇はまだ深い」と大騒ぎしながら、「疑惑」を証明できなかった自民党が面子を立てるためムキになっている域を出ないものです。

議会に、一旦可決された予算執行を停止する権限はなく、執行権は自治体の長にあります。議会として「執行すべきではない」という意思表示をすることは可能としても、議会が執行停止することなどできません。

執行部にすれば、予算を執行しないのであれば、必要だからこそ予算化した事業を不要とする理由を県民に説明しなければなりません。出資は基金協会の体力強化のため必要であるというのが一貫した執行部の見解でした。支出内容が正当であり、かつ執行権限も付与されているにもかかわらず、予算が不必要になったという理由もなしに執行しないのでは県民への説明がたちません。

来春には県議選挙を控えていることから、執行停止問題が長引いて政治問題化した場合、県政への妨害をくり返す実態が県民に明らかなり、自民党などへの逆風になりかねない状況もあります。