2006年8月27日

「よこまは水産」問題 県議会産経委調査で明らかになったもの 県民不在の引き延ばしは許されない
 参考人聴取で発言する野村元海洋局次長(7月12日)
県海洋局が平成12年から18年まで予算化し実施した出資が「よこはま水産」がらみの「闇保証」であると自民党県議団が追及している問題を調査している県議会産業経済委員会は、8月11日に会議を開きましたが、何を明らかにするのか焦点が定まらない中での審議に徒労感が漂っています。これまでの産経委の調査で「闇保証」疑惑の何が明らかになったのかを整理します。

「疑惑」の概要

4月、自民党の土森正典委員が12年から18年度まで県が県信用漁業基金協会金に出資した年間900万円は、11年5月に県信用漁業協同組合連合会が県の要請を受けて実施した「よこはま水産」(旧佐賀町、社長は村越久佐夫・当時部落解放同盟県連副委員長)への5000万円の融資の見返りとしての「闇保証」だと指摘したことが発端。

6月には野村俊夫・元海洋局次長(現県土木技術公社理事長)が、軌を一にして「出資は融資と表裏一体」「出資は組織決定」と発言しました。一方で執行部は、出資と「よこはま水産」は無関係。基金への出資は基金協会の体質強化、国の新たな融資制度に対応するための計画的増資であり、これが「組織決定である」と反論しています。
 
「ストンと落ちない」
 
年間900万円の基金協会への出資は「よこはま水産」への融資の見返りであり不当なのか、またこれを橋本知事が認めていたのかどうかが調査のポイントになります。

調査の最大のヤマ場は7月12日、産経委に野村俊夫・元海洋局次長が参考人として出席した事情聴取でした。この場で野村氏は「体質強化ということで判断されたことは、それは我々も組織の一員として、認めざるを得ない。けども(略)ストンと落ちない」と述べました。つまり出資は「よこはま水産」とは関係ないというのが、県組織の意思であることを野村氏自身が確認したのです。結局、問題は「ストンと落ちない」という野村氏の受け止めでしかありません。また知事が「よこはま水産」と関係があれば出資は認められないと繰り返し明言していたことも明白であり、すでに調査すべき点について完全に決着がついています。

「百条委」設置論も

にもかかわらず自民党・土森議員は@「よこはま水産」問題は13年の集中審議(※)で総括済というが、出資関連の資料は当時は出ていなかった、A基金協会への出資が本当に必要なのか。新船をつくる者などおらず不要であると言い「百条委員会を設置すべき」だと主張しています。しかし、土森議員の議論は肝心な点が欠落しています。

「よこはま水産」問題で最も重要なのは、部落解放同盟の圧力に屈した主体性を欠いた県行政のあり方でした。集中審議の後、県は全国に先駆けて同和行政を撤廃し、同和団体との交渉を公開して、交渉内容をホームページに掲載するなど改革に着手。自民党・中内県政時代から続いてきた同和行政=「解同」屈服路線と決別します。

集中審議の際に、すべての資料が出ていたわけではないのは当然ですが、13年以降の抜本的な同和行政の大転換という基本を抜きにして、11年の時点のことをあれこれ言うのは本質的ではありません。
また900万円の出資の性質については、国の融資制度に対応するため定められた残高を目標にして計画的に積み立てるという県海洋局の説明には説得力があり、自民党県議団自身もこれまで賛成してきた経過があります。

8月時点では、大半の議員がまとめに入り9月議会には結果を報告して調査を終えるのではと想定していましたが、自民党議員が強硬に引き延ばしを狙い12月議会まで引っ張る気配も出てきています。引き延ばすことで知事が「闇保証」に関わっていたという印象を流して、政治的ダメージを与えるのが狙いと思われます。とうに決着済の問題を、政治的な思惑で蒸し返して県費と時間を浪費するやり方へに県民の批判は避けられません。

※平成13年7月、8月、9月、10月に行われた県議会産業経済委員会での「よこまは水産」問題の集中審査。執行部は「行政の主体性を欠いた対応を大いに反省する」との見解を表明し、9月県議会で雨森広志委員長(自民党)が、執行部の反省を了とする報告をして承認されている。