今回の違法倉庫問題で見逃せないのは高知市の対応。特定市民・業者の言いなりになる体質からの脱却が厳しく問われている時でもあり、副議長による公然たる法違反に、毅然とした対応を取れるかどうかは、高知市政の根本が問われる問題でした。
結果的に、高知市が結論を出す前に、A副議長が倉庫を撤去し申請を取り下げましたが、もし取り下げがなければ市はどんな対応をとっていたのか。残念ながら、毅然とした対応とはほど遠いのが現実でした。
A副議長が辞表を出した8月1日の市議会各派代表者会の席上、津村一年議長は「農水は追認するという結論を出していた。19日に議長室で説明を受けた」、「追認は他でも行われており、Aさんだけを追認しないわけにはいかないというのが農水の結論だ」、「(市当局が)追認をA市議に通知しかけていたのを、自分が止めた」などと発言しました。
市側も一時期までは、津村議長の発言と一致する見解を公然と述べていました。
「農業委員会会長と同農地部会長、執行部で相談して追認することを決めていた」。農業水産課が江口善子市議の問い合わせに回答(7月21日)。
「追認することになっていたが、取り下げられてホッとしている」。江口市議に農業水産課が回答(7月24日)。
「始末書を書かせて追認することになっていたが、その前に取り下げられた」と農業水産課が高知民報の取材に回答(7月27日)。
しかし、市側は7月28日以降、態度を変え、「追認すると決めていたわけではない」と言いはじめます。
「議論の過程では追認するという選択肢も出たことはあったが、まだ結論はでていなかった」。農業水産課が高知民報の取材に回答(7月28日)。
こういう状況下で「追認を決めていた」という津村議長の発言が8月1日に飛び出しました。「追認は決めてない」と言っている市側の主張とのズレを指摘すると、市側は「議長に議長室で説明したことなど一度もない」(木藤善治・農林水産部長)と真っ向から否定。これに引きずられるように3日の代表者会で津村議長が「追認を決めていたとは言っていない」と前言を撤回しました。
■圧力への弱腰また露呈
一連の経過を見れば、市側が追認を内部的に決めていたことは動かしようがありませんが、この問題が報道されて市民に知られるようになってからは、特定議員の圧力に屈したという批判を恐れて、「追認を決めていたわけではない」という態度に転換したのが実際と思われます。
今回の事例は、いったんは市が指導して中断させた工事を、手続きの無視を百も承知で再着工。倉庫が農業用であるという実態も極めて乏しいうえに、再三にわたり議会を使って市や土木委員に圧力をかける悪質さ。「建ててしまえば追認するしかないだろう」というのが本音であり、純然たる農業者が手続きを理解しないままで建ててしまったというようなケースとはまったく異なります。
問題は、市がこれほどあからさまなルール違反にも、あいかわらず毅然とした対応を取れないという体質を露呈させたこと。追認寸前で取り下げがあり、事なきを得ましたが、副議長の「やり得」を許していれば、市民の不信増大は避けられませんでした。特定塗装業者問題の反省を生かして、公正な市政をどう構築するのかを真剣に考える時です。 |