2006年6月25日

「よこはま水産」問題の核心は何か ネガティブキャンペーンが狙い(下) 
平成12年度の出資金の見積書(後に減額されている)
平成12年から18年にかけて県が県信用漁業基金協会に拠出した出資金は毎年予算計上されて、自民党県議団を含む県議会の賛成を経て支出されているものであり、手続きにも問題はありません。

にもかかわらず自民党県議団は執拗に、この出資を「同和行政の闇がまだ続いている」と「追及」する姿勢を崩していません。自民党県議団の不可解な行動には、県議会内部、県職員からも「振り上げた拳をどこに下ろすつもりなのか」といぶかる声が出ています。

そこで新たに持ち出してきたのが、産業経済委員会への関係者の参考人招致です。対象者は「連休中に謀議を凝らした」と自民党県議団が強調している11年5月4日、破綻寸前の「よこはま水産」への支援策について話し合った打ち合わせへの出席者(副知事、財政課長、海洋局長、同和対策長など当時の県職員)。中西哲・産経委員長が聞き取りをして、委員会に招致するか否か判断するとしています。
 
狂ったシナリオ

11年当時は県が部落解放同盟言いなりの主体性を欠いた異常な同和行政が転換される以前の話であることから、5月4日に限らず、似たような場面は何度となくあったにもかかわらず、なぜ自民党県議団は5月4日にこだわるのでしょうか。

産経委の審議からは自民党県議団は5月4日の打ち合わせに久保田寿一海洋局長(当時は秘書課長)が参加していたという情報を当初持っており、この情報を前提にして一連の「疑惑」を仕掛けた気配が濃厚です。自民党委員は繰り返し、久保田海洋局長(11年当時の秘書課長)に「5月4日の会合に参加していたのではないか」と迫りました。つまり、11年5月4日の会合に、久保田秘書課長(当時)が、橋本大二郎県知事の特命を受けて参加し、県信漁連に「よこはま水産」へ融資させる「見返り」として、基金協会への増資を「闇保証」として確約させたというシナリオです。しかし久保田局長は当時の手帳の記録を見て「窪川でゴルフをしていたので参加していない」と明確に否定。久保田氏の「アリバイ」によりシナリオが崩れ、着地点は見えていないのが実態といえます。

このような「無理筋」を自民党県議団が仕掛けてくる背景には、次期知事選が1年数ヶ月後に迫っていることがあります。橋本知事は自著「融通無碍」で事実上の「出馬宣言」。知事に「疑惑」をしかけ、ネガティブキャンペーンを引き延ばして、マイナスイメージを印象付けるのが目的と思われます。自民党県議団が県政の同和行政の遺物を取り除きたいと真剣に考えているわけではありません。2003、2004年の連年知事選で自民党は、「反橋本」で部落解放同盟と組み松尾徹人氏を推しました。「闇」の張本人と選挙では平気で組みながら、ネガティブキャンペーンのためなら節操なく飛びつくご都合主義に批判は避けられません。

高知新聞の論調 

4月以降、「高知新聞」はこの問題に力を入れ「疑惑」キャンペーンをはり、4月29日朝刊には11年頃の「よこはま水産」への県の対応を「闇はまだ深い」と書きました。この前日、28日の県議会産経委員会では「高知新聞」の記者や政治部長、社会部長などが総動員され議場が同社関係者であふれかえるような異様な光景が見られました。しかし、自民党県議団や「高知新聞」が「闇」と言っている問題は基本的に13年の集中審査で明らかにされ、「主体性を欠いた対応を大いに反省する」と総括されて、抜本的に見直された問題ばかり。今になって騒ぐのは的外れと言わなければなりません。

その一方「高知新聞」の記事からは「よこはま水産」問題が、行政が「解同」の圧力に屈服したことが最大の要因であり、その後県が不正常な同和行政を根本的に改めたという肝心なところが伝わってきません。県がしたとされる佐賀町漁協への「働きかけ」についても、県を言いなりにさせていた村越比佐夫氏(当時はよこはま水産社長、「解同」県連副委員長)が同漁協の理事をしていたという重要な事実も報じていません。「高知新聞」の論調には報道関係者からも「やりすぎ」「選挙資金疑惑を思い出す」などの声があがっています。(おわり)