2006年6月18日

「よこはま水産」問題の核心は何か 村越氏は佐賀町漁協の理事だった(中) 
不適正融資があったとされる平成11年の佐賀町漁協業務報告書)
佐賀町漁協が「よこはま水産」に行った融資のうち3700万円が回収不能になった背景に県の圧力があったと6月1日の県議会産業経済委員会で自民党委員が指摘し、『高知新聞』は「背景に行政圧力?」と大見出しで報じました。

中西哲・産経委員長(自民)は「平成13年の集中審議当時、この問題は出ていなかった」と新たに発覚した疑惑であると強調しました。
 自民委員や『高知新聞』の記事では佐賀町漁協は県に圧力をかけられた一方的な被害者のように描かれていますが、触れていない重大な事実があります。それは村越比佐夫・よこはま水産社長と佐賀町漁協の密接な関係。

村越氏は長年同漁協の理事を務めて大きな影響力をもっていました(高知民報の調べでは少なくとも平成元年から13年まで理事を務めている)。

『高知新聞』が「不適正融資」が行われたとしている10年から12年にかけては村越氏は同漁協最古参の理事。佐賀町漁協は、「解同」佐賀支部長、同県連副委員長、佐賀町議を務め佐賀町政に君臨してきた村越氏の強い影響下にありました。

いくら県から働きかけがあったにせよ、同漁協が正規の理事会も開かず(高知新聞による)、ずさんな資金融通を「よこはま水産」に繰りかえしたことは、漁協資金の特定理事の「私物化」につながり、当時の理事であり当時者の村越氏自身の責任は免れません。

破綻寸前の「よこはま水産」の延命のため村越氏の言いなりに融資を依頼した県の責任は重大ですが、同漁協の内部問題とは区別して考える必要があります。いずれにせよ13年の集中審議で県が明らかにした「一民間企業への県の偏った関与を深く反省する」という総括の範囲内の話であり、「新たな疑惑」であるかのような指摘はあたりません。

計画的増資

土森委員(自民)が問題視した県漁業信用基金協会への12年から18年度までの年900万円の県の出資金は、「闇保証」などといえるのでしょうか。県海洋局は、基金への出資は土佐のカツオ船の灯を消さないための行政の取り組みであり、「よこはま水産」への支援とは無関係であると強く主張しています。

同基金は、国、県、市町村、漁業団体や漁業者の出資により漁業者が新船建設などの事業を起こす時に、融資の保証をする公的な組織。漁業が構造的な不況にあり、漁業者が拠出する基金が減少していることから、漁業を支援する目的で、国、県、市町村は数10年間にわたり同基金に出資し続けてきました。

土森委員が指摘する出資金について、県水産経営指導課では7年に国が「漁業近代化資金」という融資メニューの限度額を2億4000万円から3億6000万円へ増額に対応するための出資であるとし、基金の出資金等の残高が水産庁の示した水準に足りないと、国の融資制度があるにもかかわらず漁業者が制度を利用できない事態になることから、これを避けるための計画的な増資であると説明しました。

「利用希望があった時に制度を使えるようにするのが県の仕事。利用希望が出てから一気に増資できれば毎年の出資は必要ないが、そのような財政事情ではないことから、計画的に増資している。これまでも国が制度を新たに作った時には増資をしてきた(県水産経営指導課)」。国の制度があるのに、県基金の残高が不足しているばかりに、利用希望者が融資を受けられない事態を避けるため、県が計画的に増資するのは行政の果たすべき役割としては当然のことでしょう。(つづく)