2006年6月18日

給与87万円? 県高知市誘致コールセンター オーシャンテレコム 
「支給額87万円」が一番目立つオーシャンテレコムの求人広告
県と高知市が誘致し公金から多額の補助金が投入されているコールセンター「オーシャンテレコム」(上村陽介社長、光通信子会社と大旺建設が共同出資)が、「給与実例87万円」などという実態とかけ離れた求人広告を求人誌に出していることが判明しました。職業安定法42条では「募集に応じようとする労働者に誤解を生じさせることのないよう的確な表示に努めなければならない」とされています。公的資金が投入される社会的責任のある企業が、法の精神を踏みにじる求人広告を出すことが許されるのでしょうか。

広告が掲載されていたのはコンビニなどで無料配布されている求人誌(週刊タウン909号)で、「高知県高知市誘致企業」と書かれた下に「給与実例入社9カ月女性 支給額871769円」と特大のカラー文字で目立つように大書きされています。本来支給されるはずの給与(月給18万円から23万円定額残業代込み)が目立たないように書かれているのとは対照的です。求人広告に書かれている電話番号に電話をかけて広告の記載について聞いてみました。以下はやりとり。
 
−−給与実例87万円と書いてますが毎月もらえるのですか。

オーシャン もらえる人がおりますという例えになるかと思うんですけれども・・・、確実にありますという記載がないかとは思うんですけれども・・・、実力次第でそれくらいもらえる方もいらっしゃいますいうことで・・・。
−−給与にはボーナスについて書かれてないのですが、ないんですか。

オーシャン
 こちらは応募受付の電話になっておりまして、詳しい説明会を別途行っておりますので、そちらに参加していただくことになります。

質問にまともに答ようとせず、説明会に参加することを求めてくるのが特徴的でしたが、どうやら月額87万円は「実力次第」でごく一部のものしかもらえないようです。このようなものを求人広告に大きく書くことは職業安定法の禁ずる「労働者に誤解を与える」ものになるのではないでしょうか。企業のモラルと常識が問われます。

実態は過酷なテレアポ

オーシャンテレコムは「コールセンター第1号」として高知市と県が、鳴り物入りで誘致して2004年10月から開業。業務内容について県市は「商品の問い合わせや受注、クレーム対応などの業務を他の企業等から受託し多数のオペレーターによるサービスを提供する」ものであるとして、顧客から電話を受ける仕事であることを繰り返し強調してきました(光通信がテレアポ専門会社であることは衆知の事実であったにもかかわらず)。しかし実際の業態は商品販売のために電話をかける無差別テレアポであり、県市の説明とはまったく違っていました。

テレアポは強いストレスがかかり、厳しいノルマに追われることから、社員の定着率は極めて悪く、2005年度の離職率は月10%前後を推移しています。「以前はもっと高かったが大分落ち着いた(県企業立地課)」。月10%の離職率とは、毎月1割が辞める職場。つまり5カ月で半分が辞め、10カ月で全員いなくなるというすさまじい職場環境であり、「落ち着いた」などと言えるものでは到底ありません。

求人の際にテレアポであることを前面に出すと人が集まらないことから、オーシャンテレコムは徹底してテレアポ業であることを隠しています。求人広告にはテレアポはもちろん、セールスや販売という言葉すら出てきません。求人の際にはなるべく実態を知らせずに説明会に参加させ、入社させるもののすぐ離職者が大量に出ているのが実態です。

公費5900万円

2004年10月の開業以来、オーシャンテレコム社には県・高知市から合計5900万円もの公費が投入されています。人件費はもちろんのこと、建物賃料(※)、テレアポの電話料金まで面倒をみる至れり尽くせり。この厚遇措置は2009年まで続くことになります。

今回の求人広告は、同社が多額の公費を受けるにふさわしい企業であるかどうかを改めて考えさせるものでした。他県に遅れまいと企業の質をまともに吟味せず「光通信」系企業に飛びついたツケは行政に重くついてまわります。

建物賃料として累計525万8千円(17年度末)が支払われているが、もともとオーシャンテレコムの建物は大旺建設所有の空きビル。大旺建設は自ら出資している子会社から賃料をとり、それを公費で補助させている。結局、多額の公費が大旺建設に環流する不自然な形になっている。