2006年6月11日

「よこはま水産」問題の核心は何か 県同和行政の大転換を土台に(上) 
現在施設は明神食品が管理している(旧佐賀町)
4月14日の県議会産業経済委員会(中西哲委員長)の県海洋局による業務概要の説明中、自民党の土森正典委員が、県が平成12年から18年度まで県信用漁業基金協会(新船の資金などの負債を保証する公的な団体)に出資した年間900万円は、11年5月に県信用漁業協同組合連合会(漁業者向けの金融機関)が県の働きかけを受け実施した「よこはま水産」(旧佐賀町)への5000万円の融資の見返りの「闇保証」であると問題視したことを契機に4月28日、6月1日に産経委が開かれました。

高知新聞が「水産会社救済疑惑」と書くなど「疑惑」を強調していることもあり、問題が長びく兆しも見えてきています。「よこはま水産」問題を考えるポイントを過去の経緯を振り返りながら考えます。

「よこはま水産」とは

「よこはま水産」問題の事の起こりは平成2〜3年。部落解放同盟県連の激しい行政闘争の結果、「解同」に完全に屈服していた当時の県政の主導で佐賀港の後背地に「同和地区住民の就労対策」を目的に21億円の国費、県費を投入した大型水産加工共同作業施設(工事期間は3年から6年。所有は旧佐賀町)が作られました。

この施設を「解同」県連副委員長の村越比佐夫氏が社長を務める「よこはま水産(株)」が家賃月20万円程度で借り上げ、4年9月に操業を開始します。巨大な設備はすべて行政持ち。「よこはま水産」はほとんど設備投資のいらない身軽な形での営業開始でした。

当時は同町の「明神水産」のカツオのタタキ販売が注目されていた時期で、このブームに便乗を目論もうというものでしたが、甘い販路の見通し、過大な人件費などにより会社経営は操業直後からすぐ行き詰まり、5年には「よこはま水産」が底をついた運転資金を金融機関に借りるために旧佐賀町に3億円の損失補償(保証人のようなもの)を設定させました。

この根底には「同和地区の就労対策のためであるから、行政が面倒を見て当たり前だ」という、自立した企業とはほど遠い「よこはま水産」の考え方、「解同」に要求を出されれば何を言われても応える行政という、モードアバンセ事件とまったく同じ構図がありました。

さらに経営の行き詰まりが深化した8年以降、「解同」と「よこはま水産」は県により直接的な支援を露骨に要求するようになり、以後12年まで県海洋局は、モード社に対して行ったような県費から直接貸し付ける「直貸し」こそしていないものの(実施の検討はしていた)、銀行に同水産への融資の返済猶予を依頼する念書、県保証協会などに新たな融資への保証を頼む念書を連発して傷を広げていきました。

13年の集中審査

このような県の異常きわまりない対応にようやく終止符が打たれるのが13年のこと。

それまでにも「よこはま水産」の問題点は県議会で日本共産党が繰り返し指摘して、とうに明らかになっていました。土森委員が所属する自民党をはじめ他会派は沈黙し、「高知新聞」も問題視することはありませんでしたが、12年3月にモードアバンセへの「闇融資」事件が発覚し、県議会に百条委員会が設置されて県政を揺るがす大問題に発展し、13年5月に県が覚書・念書類をすべて公開するという激しい動きの中で、「よこはま水産」の実態にもようやくメスが入りました。

同年7月、8月、9月、10月に行われた県議会産業経済委員会での集中審査で「よこはま水産」の問題点が詳細に明らかにされ、県は「行政の主体性を欠いた対応を大いに反省する」との見解を表明。10月12日の県議会9月定例会本会議で当時の雨森広志委員長(自民党)が、執行部の反省を了とする旨の報告をして承認されています。

この動きと軌を一にして県は13年度末の特別措置法の期限切れを待たずに年度半ばから、県レベルでは全国で初めて同和行政の撤廃を開始。同和団体との交渉を報道に公開して、記録をホームページに掲載するなど大胆な改革に着手し、自民党・中内県政時代から続いてきた同和行政=「解同」屈服路線と決別しました。

現在、自民党の土森委員や「高知新聞」が「疑惑」として強調しているのは、11年5月4日に副知事、海洋局長、財政課長らが「よこはま水産」への救済策を相談するために集まったという会合で、「休日に謀議をこらし、何があったのか」と、思わせぶりをくり返しています。

しかしながら、8年から12年にかけて県が「解同」屈服路線にどっぷり浸かっていた真っ最中であり、指摘のような会合があっても驚くに値しません。「疑惑」とは「怪しいが、事実として確定できない」ことを指す言葉。「よこはま水産」への県の異常な対応は「疑惑」ではなく確定した事実です。現在、産経委であれこれ出ている問題は、この範囲内のことでしかありません。少なくても今「よこはま水産」を問題にするのであれば、最低限13年の産経委の集中審査と県同和行政の大転換という土台から出発する必要があります。(つづく)