2006年6月4日

灰溶融炉スラグ流出事故どうして 三菱重工の責任は重大 高知市清掃工場
灰溶融炉2号炉の損傷の状況
4月29日に起きた高知市清掃工場(高知市長浜、三本博三工場長)の灰溶融炉(三菱重工製)2号炉からドロドロに溶けた高温(1300度)のスラグ(ガラス質)が炉底の耐熱レンガを溶かして流出した事故について5月27日、高知市は事故の中間報告を明らかにしました。事故原因は調査継続中とされていますが、耐熱レンガの耐久性に問題があったことは明らかであり、徹底的な原因究明と三菱重工の責任追及が今後の焦点になってきます。

同清掃工場の灰溶融炉(40トン炉)は、焼却炉から出た灰を1万度の高温で焼くことによりダイオキシンが出ないよう分解するもの。焼却炉の余熱で発電された電力で発生させたプラズマ(放電)で灰を焼きます。灰溶融炉にコンベアで送り込まれた焼却灰は、幾重にも敷き詰められた耐熱レンガの中で焼かれ、スラグ(ガラス質)とメタル(金属)に分離して(比重の重いメタルが下になる)炉底にたまります。

たまったスラグはオーバーフローさせて排出し、炉底のメタルは炉全体を傾けて排出口から炉外に出します。スラグは道路舗装の材料などに、メタルは金属の原料として再利用されています。

同工場の灰溶融炉は同型の1号機、2号機があり、2002年4月から運転を開始。約3カ月ごとに交互に運転してきました(使用期間は実際の期間の半分で計算することになる)。今回の事故の理由は、今年6月までもつとされていた炉底の耐熱レンガの劣化の進行が想定以上に速かったこと。レンガの異常消耗は一気にすすみました。「じわじわ消耗が進んだのであれば、炉底の外側のケースが赤熱するなどの変化があったはず」(三本工場長)。事故当日も周囲には作業員がおり、直前には巡回もしていたにもかかわらず、スラグが流れ出すまで異常に気が付きませんでした。

不可解なレンガの交換時期

稼働から1年弱(炉の使用期間は6カ月弱)経過した03年7月に初の大規模な補修が行われ、三菱重工が炉底レンガを交換していますが、この時に炉底レンガの消耗が激しく、工場関係者によると「ほとんど残っていない状態だった」。すでにレンガの耐久性に問題ありという危険信号は出ていました。

この事態を受け三菱重工はレンガの材質を変えることにより16カ月の耐久性を持たせたとし、次期交換期限を06年6月としました(三菱側はレンガの材質を公開していない)。しかし7カ月間で「ほとんど残っていない」ほど消耗したのと同じ運転状況で、材質を変えただけで16カ月間に耐久期間が伸びるというのは通常は考えられません。

溶融炉は、炉底にメタルが常に貯まった状態(炉を傾けメタルを出す時も一定量は底に残しておく)になるため炉底のレンガの状態を目視でチェックすることができないことも考えあわせれば、レンガの耐久性についてはもっと慎重であるべきでした。

他自治体では数カ月に一度の炉の停止中に、冷えて固まったメタルを削(はつ)ってレンガを目視チェックしているところもあります。せめて材質を変えたレンガの耐久性が実証できるまで目視チェックをしていれば事故は防げたはずです。三菱重工は16カ月間もつ製品としてレンガを納入したにもかかわらず実際には15カ月間で消耗した事実があり、その責任は免れません(瑕疵担保期間は05年3月で切れている)。

底の穴とメタル増量

03年7月の補修の際、三菱重工は炉内の温度を測るため温度計を挿す穴である「熱電対取り付け座」を炉底に空けていますが、今回の事故でスラグが外部に流れ出たのはこの穴からでした。穴の位置は、すり鉢状の炉底の中心からずれています。レンガの消耗が鉛直方向ではなく、この穴に向かってななめに走っているのは不自然であり、穴を空けたことによる外気流入による温度差、酸素が供給されたことによる反応などが異常を一気にすすめた可能性も考えられます。

三本工場長によると「最近はメタルの量が増えていた」といいます。運転開始の当初は10日に1回程度だったメタル排出作業が、7日に1回ほどに増えていました。要因は04年10月から始まった可燃雑ゴミの同工場での焼却。焼却ゴミには木製品のクギや針金ハンガー、ビデオテープなどが大量に入るようになり、灰の中の金属分が増加したと考えられます。耐熱レンガが最も激しく消耗していたのは、炉を傾けた時にメタルが貯まる位置だったことからも、メタル増加によって炉を傾ける回数が増えたことが、レンガの耐久性を縮めた可能性もあります。

同工場では事故原因がまだはっきりしていないことから、故障していない1号機も運転を停止。焼却炉から出る灰は埋め立て処分をしています。今回の事故で人的被害は出ていませんが、現場は高濃度のダイオキシンが出る危険地帯であり、一歩間違えば大惨事を引き起こしかねない重大事故でした。情報を全面的に明らかにして、徹底的な原因究明と三菱重工の責任を明確にさせなければなりません。その際には溶融炉は未完成の技術であることを肝に銘じた慎重な対応が必要です。
写真説明 (左上)スラグ流出事故を起こした2号炉、(右上)炉底の温度測定用穴から飛び出したスラグ、(左下)事故直後あふれ出して固形化したスラグ、(右下)炉の内部。耐熱レンガが見える。上から垂れ下がっているのが電極 写真はすべて高知市清掃工場の提供