2006年5月28日

世帯分離なぜできぬ 障害者の負担軽減策が高知市の市営住宅住民だけ不利益
高知市鏡川町の市営住宅
障害者が介護などのサービスを利用する時の負担を「応能」から「応益」にする「障害者自立支援法」が4月から始まり、障害者と家族がいきなり高額な負担を迫られていることから、この負担を少しでも回避するため成人した障害者本人の世帯を分離して所得計算することが全国的に行われています。ところが高知市の市営住宅に住むMさん家族が長男を世帯分離しようとしたところ、市が分離を認めなかったことから問題になっています。

高知市西部の市営住宅に住むMさん。重度の障害を持つ21歳の長男は、土佐市内の作業所に通所し、週2回ヘルパーの入浴サービスを受けています。

3月までの月々の負担額は食費や送迎費用など月額約2万円程度でしたが、4月に「自立支援法」が始まったとたん約5万円に負担が跳ね上がりました。「増えるとは聞いていたが、正直これほどとは思っていなかった(Mさん)」。

Mさんの仕事は建設関係で「ただでさえ仕事が減っているのに、雨が多く15日しか働けない月もある。これまで介護のため仕事をしていなかった妻が4月から仕事を始めたが、この負担がいつまで続けられるか不安。無理なら作業所をやめて家にいるしかない。ずっと家にいるより作業所に通ったほうが息子のために良いことは分かっているのだが、しかたがない」。

年間20万円もの差に

高額な負担増の実質的な激変緩和措置として厚生労働省も認めて全国的に行われているのが「世帯分離」です。Mさん家族の場合、現在長男は家族と同一世帯になっているため「一般」カテゴリーになり、サービス利用料の負担上限額は月37200円。

これを世帯分離した場合は、長男は単身世帯となり「低所得1」に該当。負担上限額は15000円であり、月々の支払いに多額の差がでます(食費、その他の負担も含め計算は複雑だが月2万円弱、年間20万円ほどの差は確実に出る)。

世帯を分離することによって、高額な負担にさらされている家族の負担を軽減できるケースが多いことから、土佐市のように積極的に世帯を分離する働きかけをしている自治体もあります。高知市では「市役所から積極的に知らせはしていないが、分離したいという希望があれば応えている。実際は(可能な世帯では)ほとんどの世帯が分離している(元気いきがい課)」という対応をとっています。

県営住宅、他市の市営住宅、民間アパートに住んでいれば問題なく世帯分離ができるのに、なぜ高知市の市営住宅に住んでいる者だけが、この軽減策を使うことができないのでしょうか。市営住宅を管理している住宅課では、民間アパートは世帯分離できるのに市営住宅でできないのことに課題はあると思うが、@これまで世帯の分離を認めてこなかった行政の継続性、A分離を認めると国保や介護保険にも影響が出る、その場合の作業量の増加がどの程度か分からない、事務の効率化をすすめている時に作業量が増えるのは困るというような極めて消極的なもの。市役所側の都合だけで市住住民だけが不利益を受ける説明になっておらず、高額な負担に苦しんでいる家庭を支援しようという姿勢は感じられませんでした。