2006年5月21日

県立高校授業料免除者が4年間で倍増 県民生活の深刻化顕著 制度拡充も課題に
県立高校授業料免除者の動向(横軸は年度)
経済的困難を抱える家庭の生徒の県立高校授業料を免除する制度の利用者がここ数年で急激に増加しています。県教委の集計によるとわずか過去4年間に免除率が一気に2倍化(グラフ参照)。小泉「構造改革」路線による県民の所得低下、格差の拡大、生活悪化が顕著に現れています。

現在の県立高校の授業料は全日制が月額9600円、定時制が月額2600円。全日制の年額は11万5200円になり、またこの他にも高校入学時には制服、教科書、辞書、体操服、上履きなど学校が指定する高額な物品を多く買わねばならず、保護者の金銭的負担は大変なもの。「お下がりがもらえなければ授業料の他に10万円は軽くかかる」というのが「相場」で、高校に子供を通わせる費用負担は家庭に重くのしかかっています。

4年間で2倍化

高知県の減免制度は、家庭の所得状況、被災などにより授業料の全額または半額を免除するもので、生徒の学習意欲を前提に@生活保護世帯に属する生徒、A児童擁護施設入所者、B市町村民税が非課税、均等割でありかつ両親が病気にかかったり、失業して学費支払いが困難と認められる時、C災害により自宅の全半壊などの被害を受けた場合、Cその他家計の急変等が条件とされていますが、他県と比して対象者が(他県の状況は後述)かなり絞り込まれているのが現状です。

免除者を全生徒で割った免除率の推移は、2001年頃までは4%台を前後していましたが、2003年から急激に増加。わずか3年間で4%台から8%台へと跳ね上がりました。2005年度の免除金額の総額は約9500万円になります。免除された生徒の実数も全体の生徒数が大きく減る中で右肩上がりで増え続けており、このまま推移すれば1割をオーバーするのも時間の問題です。

香川県との比較

この種の制度は、利用対象になる家庭が制度を充分理解していなかったり、スティグマ感(免除されることを恥と感じる)のために利用に踏み切れないなど、利用にあたっては微妙な問題があることから、周知徹底が大きなポイントになります。

高知県の場合、周知は高校入学後、5月中下旬に全生徒にあてに学校長を通じて紹介のプリントを配布しています。一方、香川県が周知するのは中学3年生の時期。制度名称も「県立高等学校の授業料の予約減免制度」となっており、高校入試を受ける前に中学校を通して全生徒に文書を配布しています。高校入試の前に、制度を周知することにより、経済的な理由で進学を断念する生徒が減ることが考えられますし、生徒が安心して入試を受けることができる、温かみのある行政対応といえます。

また香川県では、利用対象者も高知県よりかなり幅を広げています。対象は県立高校に入学を希望する生徒で、@生活保護世帯、A母子家庭(2人家族で課税所得額が250万円程度)、B交通遺児、C市町村税が非課税世帯、D同が均等割のみ(※)。

2004年度末の高知県下の高校進学率は97・3%に達しています。準義務教育化している高校教育が、家庭の経済的な理由で奪われることのないよう先進地にも学びながら全力をあげた取り組みが必要です。

※高知県の場合はこれに病気や失業などの条件が上乗せされ厳しくなっている。徳島県も高知より基準が緩められている。