2006年3月7日

「昔は50人、60人いた」 自民党・森田英二県議が30人学級廃止を要求 切実な県民の願いに逆行 
3月6日の県議会本会議で質問に立った森田英二議員(自民党・土佐市選出)が、30人学級をやめるよう県教育委員会に迫りました。30人学級は子供一人ひとりに行き届いた教育を実現するため、県民の強い要求を受けて単独加配の教員を配置して小学校1〜2年で実施され、18年度からは小学3年生に35人学級として拡大される方向が打ち出されていますが、森田議員の質問は切実な県民の願いに冷水を浴びせるものです。

森田議員は、「際限なく小さくしていくのが問題解決につながるのか」と述べ、香川県が少人数学級制をとってないのだから高知県もやる必要はないと主張していますが、その前提が事実を歪曲するものです。

そもそも30人学級は「際限なく」クラスを細分化するものではなく、担任が生徒1人1人に行き届いた指導ができるように適正な集団規模にするものであり、少なければ少ないほどよいなどというものではありません。また森田議員はどうしたことか触れていませんが、2005年度に少人数学級を実施していないのは全国的には東京都と香川県だけ。45道府県で何らかの形で実施されています。さらに、その香川県でも県民世論に押されて2006年度から生徒指導上の効果を理由に中学校1〜3年生を対象に少人数学級を実施する予定になっているのです。

また香川県ではすでに2001年度から複数担任制や少人数での指導を実施する「香川型教育指導体制」により、実質的には少人数指導は行われていました。少人数学級の有効性については文部科学省も認めており、すでに決着済の問題。前提となる事実をねじ曲げて、学校から先生を減らすことに執念を燃やす森田議員の主張は特異なものです。

森田議員の質問要旨

国の標準的な措置費以上に配分している小中学校の県単教員が、高知県には277人もいる。毎年毎年高知県の財政負担として大きくのしかかる県単負担教員の人件費は1人の年収を800万円と仮定すると年間22億円。とても大きな額だ。

県はここまで逼迫した財政状況にあるというのに、知事は現行の小学1、2年生の30人学級に続き、来年度からさらに小学3年生をまたもや35人学級として導入しようとしている。これに対応するための加配教員は17人必要となり、そのうち県単負担の人件費は11人分。香川県などではこのような小中学校の少人数学級編成は全くとられていない。愛媛や徳島では1、2年を対象に35人学級を部分的に取り組んではいる。

財政の逼迫のみを理由に言うのではないが、果たして学級自動の数を際限なく小さくしていくことが、本当に学校教育の本質の解決につながるのか。昔は50人も60人もが一教室にいたが、教室は静穏だった。時代が違うのかもしれないが、各県の違いを考えると、教師が教室をまとめる能力にもよるのではないかとさえ思いたくなる。

そういえば転勤で高松に行っていた奥さんも、松山から帰ってきた奥さんも、行く前の本県の教師の指導力や授業態度と比べながら「もう高知には帰りたくない」と口を揃えて言った。各県の学校の様子の違いは、教師の力もさることながら、家庭や地域の教育力の差が影響していることも間違いない。そんなことを考える時、加配教員に費やされている財源は、学校教育だけに投入されるのではなく、もっと広く県下全体の家庭や、社会全体の教育的な分野に広く投入されていくことのほうが、長い目で見た場合、学校教育の本質的な問題の解決になるのではないか。

加配教育に代表されるような制度を9年間も続けてきた「土佐の教育改革」は学力や非行の面で本当に成果を出したのか。家庭や地域の教育力をもっと改善し、健全な社会を作っていくほうが、教育正常化の王道だ。地域の教育力向上によい意味を発揮し始めていた地域教育指導主事を引き上げてまで、少人数学級に振り向けていくことは、単なる教室運営上の対処療法にしか過ぎない。教育の本質改革ではない。