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県警と同居する県公安委 |
知事と県議会が請求していた県警捜査費(県費分)の特別監査(平成12年度から16年度、県警本部と高知署)の報告が2月22日に県議会本会議で行われ、約1800万円の不正支出の存在を認めて「クロ」と断じたことに、激震が走りました。県警本部のこれまでの「不適正な支出はなかった」という言い分は真っ向から否定され、「県警はウソつきだ」と言われたに等しい内容。県警幹部に不正に支出された公金の返還を求める動きも起きています。県警は県民に対してきちんと説明する責任が問われている一方で、県警任せにするだけではなく、県警を監督する県公安委員会の役割が重要になっています。県公安委員会改革の方向性について考えます。
■核心の12年度
今回の特別監査は、昨年7月に橋本大二郎県知事と、県議会から請求を受けたことにより実施されたもの。とりわけ予算に対する執行率が9割台後半と異様に高率だった12年度が対象に含まれたことは、実体解明に決定的な意味を持つものでした。
県警は監査委員の調査に対し、領収書を黒塗りにして非開示にしたり、開示した資料でも現物ではなくコピーしか見せないなど妨害ともいえる姿勢を最後まで崩しませんでしたが、一方で捜査員と監査委員が直に対面して聞き取りができたことから実体に迫る貴重な証言も出ています。
監査委員報告の内容は衝撃的でした。12年度から16年度に執行した県費分の捜査費103789件(5141万円)のうち85件(77万円)「支出の実体なし」、115件(69万円)「不適正な支出」とし、件数金額とも3割を超える3178件(1645万円)を「不自然な支出で疑念がある」としました。
また「電話帳から名前を拾ってニセの領収書を作った」「これらは警察で珍しいことではない」という捜査員の証言や、幹部が聞き取りの中で「今はやっていないので勘弁してほしい」という意味合いで「あったかなかったかと問われれば答えられない。察してほしい」と述べたことなどを生々しく記載。謝礼金を一度も払ったことがないという鑑識課で12年度に多額の支出があること、空欄の領収書に後から金額を記入した形跡があることなど詳細に不適正な支出の存在を指摘しています。
県議会総務常任委員で、県警捜査費問題の審議にあたってきた日本共産党と緑心会の米田稔県議は、「我々の想像以上にずさんな実体が明らかになった。監査委員が、毅然としてここまで踏み込んだ報告を出したことは県民の負託に応えるもの。勇気を持って告発した一線の捜査員がいたことも評価したい。県警は県民が納得できる説明をしなければならない。同時に県公安委員会の役割が問われている」と話しました。
同時に今回の特別監査には限界もあります。明らかにされたのは警備公安部門を除く県警本部と高知署の一部の課の県費分の捜査費だけ。県費以上に多額に支出されている国費にはメスは入っていません(警備公安部門が国費を最も多く使っている)。また旅費など捜査費以外の項目でも同様のことが行われていた可能性も高いことから、今回明らかになった事態は「氷山の一角」に過ぎません。
■乏しい実体
県公安委員会とは県警察行政に県民の声を反映させて県警をチェックする役割をもっており、県議会の同意を得て知事が任命する3人の委員で構成されます(委員の任期は3年)。
現在の公安委員会の構成(敬称略)
委員長 鈴木朝夫 県産業振興センタープロジェクトマネージャー 高知工科大学副学長 東京工業大学名誉教授
委員 西山昌男 高知トヨタ自動車代表取締役社長
委員 濱田松一 四国銀行代表取締役会長
報酬は委員長が月額21万4000円、委員は月額18万4000円。活動内容は月数回の会議 県議会への出席、各種会議やイベントでのあいさつ、視察など。県公安委員会は県警本部総務課内におかれ、庶務は同課員が行います。警察行政とはまったくの畑違いであったり、自動車・銀行という県警に「頭が上がらない」業界の委員が、県警の出す報告を追認するだけの存在になっています。
委員選定は県警側が捜してきた候補が知事に示され、知事はそのまま議会に提案して、議会が追認するシステム。県警に都合の悪い委員は選ばれようがなく、独立性は形骸化し単なる名誉職というのが実際です。監査委員の「クロ認定」報告を受けても県公安委員会は、県警の言い分くり返すだけで、県民の代表として県警を監督する責任を果していません。監査委員報告は公安委員会の存在意義も厳しく指弾していることを肝に銘じるべきです。警察が推薦してきた委員を追認するだけの今の委員選出方法を改め、議会の推薦枠を設けたり、県民からの公選的要素を取り入れたシステム構築、警察会計職員と知事部局職員との人事交流などを研究していく時です。 |
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