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浦戸湾でつり上げられたアカメ(長野博光氏提供) |
県内の絶滅の恐れがある動植物を保護するため捕獲・採取や生息地域の開発に制限をかける県希少野生動植物保護基本条例の7月施行にむけた準備が始まっています。県は保護対象にする種の選定作業をすすめていますが、同条例は絶滅に瀕した動植物を守る手段になるのか。アカメを中心に同条例を考えます。
条例のポイントは県が選定した「県指定希少野生動植物」の@捕獲等の禁止、A生息地を保護区・特別保護区に指定、B保護管理事業の推進の3点。違反者には懲役1年、50万円以下の罰則があります。選定された種は基本的に捕獲ができなくなり、開発には知事への届出(保護区)、許可(特別保護区)が必要になります。
■幻の魚
アカメは県レッドデータブックで絶滅の危険が最高の1A類。高知県と宮崎県にしかまとまって棲んでいません。赤い目が特徴で体長1メートル超はザラ。ミノウオと呼ぶ地域もあります。淡水と海水が混ざる汽水域を生息圏に、県下の沿岸部に棲んでいますが、中でも浦戸湾と四万十川が知られています。アカメの繁殖に重要なのが河口の浅瀬に海藻が生えた藻場(浦戸湾と四万十川以外にアカメに適した藻場はまとまって存在しない)。各地のアカメは、藻場で育った稚魚が成長して回遊したものであり、アカメ保護には藻場を守ることが重要課題です。
■「本気度」
県は7月施行にむけて「まずは10種類ほど選定したい(環境保全課)」。ツキノワグマやヤイロ鳥の「当確」はほぼ間違いありませんが、問題になるのがアカメです。アカメは釣りの対象魚として親しまれてきたことから「捕獲禁止」には反発が出ることも考えられます。また県庁内の土木サイドからも公共工事の足かせになりかねないアカメの選定に抵抗する動きがあります。仮に浦戸湾が保護区に指定されるようなことがあれば工事に支障が出たり、アカメがいたことで話題になった新堀川の暗きょ化工事も進めにくくなることなどが背景にあると思われます。
県が開発を前提にしてあまりに恣意的な選定をすれば、条例を自ら踏みにじるものとして批判がでることは避けられません。アカメ指定の行方は県の条例にかける「本気度」をはかるメルクマールといえます。
■県民的議論で
アカメ保護の重要課題に幼魚の乱獲への対策があります。「四万十産」と名を付けた幼魚が(本当に四万十産でなくても)鑑賞用として一尾数万円で取引される状況があることから、業者が網で根こそぎ幼魚を乱獲しています。アカメは「雑魚」で漁協の鑑札も不要なため、現在は「合法的」に乱獲できてしまいますが、条例で種を選定すれば乱獲を防ぐ効果が期待できます。
アカメ研究家の長野博光さん(安芸市)は「儲けのための乱獲はやめさせなければならないが、釣りは文化であり一律に禁ずるのは反対。釣りよりも藻場を守るためには新堀川の暗きょ化などはやめるべき」と慎重な姿勢。浦戸湾を守る会会員の下司孝之さんは「幼魚の捕獲を禁ずる規制はかけるべき。ぜひ選定してもらいたい」という反応。実際には、釣り人には釣り上げるまで針にかかった魚がアカメかどうかは分かりませんし、釣られたアカメの多くが再放流されていることからも「捕獲禁止」を釣り行為の禁止ではなく、「持ち帰り禁止」と解釈することも可能と思われます。
県環境保全課は「県民の理解がなければ条例を生かすことはできない。異論がでにくいヤイロ鳥やツキノワグマの選定から初め、県民的議論を重ねる中で対象を広げていく。アカメは体長がある程度以下の魚だけを対象にするなど条件をつけることで多くの県民に理解してもらえるように検討してみたい」。アカメを守れという思いは県民共通の願いのはず。議論を重ねれば一致点を見出すことは可能です。実効ある種の選定と保護区指定ができるような県民的議論が重要です。
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