2006年2月19日

「小泉改革」で広がる格差 就学援助受給世帯が急増 高知市の中学では3人に1人
公立小中学校に子供を通わせている家庭が、学用品や給食費、修学旅行費用などの支援を受ける「就学援助制度」の利用率がここ数年で跳ね上がっていることが全国的に大きな問題になっています。県下で最も受給率の高い高知市の中学校の状況を調べてみました。

就学援助は経済的に困窮している世帯に学用品費や給食費、修学旅行費用をなどを支給して児童生徒が義務教育を受ける権利を保障するもので、高知市の受給資格は@生活保護を受けている世帯(教育扶助)、A生活保護に準ずる程度に経済的に困窮していると認める世帯(生活保護の1・3倍の収入、準要保護)となっています。

■格差社会

高知市でも小泉「構造改革」、「新自由主義」路線での貧困化と格差のひろがりの中で、年々受給率が急増しています。2004年度の高知市の公立中学校での教育扶助(生活保護)・就学援助(準要保護)の受給者総数は1983人。生徒総数(6005人)に占める割合は33・02%で、実に3人に1人が、生活困窮世帯の児童生徒という計算になります。

過去5年間、生徒総数が大幅に減少するなかで(00年は7609人)、受給者数は実数、率ともに年々大幅な伸びをみせており(グラフ参照)、02年度には市教委の想定を越えた増加で予算が底を尽き、補正予算を組みなんとかしのいだこともありました。その後は大幅な増加を想定して予算を組んでいるので「足りなくなることは今のところはない(市教委学事課)」。

このような状況は小学校でも同様で、04年度では4604人、25・81%の受給率。4人に1人が受給しています。05年度の結果集計はまだ年度途中でありできていませんが、同教委学事課は「すでに昨年度分は超えている。さらに伸びることは確実」と話します。

一般財源化の影響 

小泉内閣の「三位一体改革」によって05年度から、自治体が独自に資格要件や給付内容を定めている「準要保護」への援助に対する国庫補助(2割)がなくなり一般財源化されました。受給者の内訳では圧倒的な部分が準要保護世帯となることから、一般財源化の与える悪影響が心配されます。実際に06年度から給付水準を切り下げたり、受給のハードルを高くする動きがおきている自治体が出てきています。

市教委学事課は「今のところ切り下げる動きはない」と言いますが、予断は許しません。就学援助は経済的困難の中で義務教育を受ける保障となる重要な役割を果たすもので制度を後退させることがあってはなりません。中学校ごとの学校給食の有無により、同じ収入であっても給食費の援助が受けられたり受けられなかったりする現行制度の矛盾もあることから、制度の後退ではなく、さらなる充実が肝要です。

■制度を利用するには(高知市の場合)

@生活保護・児童扶養手当を受けている世帯、A市民税非課税・減税扱いの世帯、B世帯の所得合計が生活保護基準の1・3倍未満の世帯。モデルケースでは4人家族(子供の年齢等によって異なる)で302万円(所得控除後)程度以下であれば対象となります。

申し込みは学校に用紙を申請して提出するだけ(前年に市外に居住していた場合は所得証明が必要)。支給は金融機関への口座振込みのため、制度を利用していることが第三者に分かることはありません。

主な内容
 @学校給食費 実費、A学用品費 小学2〜6年13270円、中学2〜3年23870円、B新入学児童生徒学用品費 小学19900円、中学22900円、C修学旅行費 実費、D医療費 初期虫歯、慢性副鼻腔炎、中耳炎、寄生虫病などの実費、E通学費 定期代など。