2006年1月29日

定時制高校をすべて単位制へ 県教委 19年度から在校生も一斉に
いち早く単位制を導入した県立北高校
県下の定時制高校を、平成19年度からすべて単位制高校にする計画を県教委が急ピッチですすめています。「自由に単位が選べる」とバラ色に描かれる単位制ですが、現実には大きな問題を抱えており、学校現場の実態を無視した拙速な県教委の手法に、定時通信制の校長会で異論が噴出したり、県下の定時制高校の教職員から疑問の声があがっています。1月21日には県高教組が「単位制を考える学習会」を開き、単位制高校の現状と課題について意見交換しました。

単位制高校とは

単位制高校のうたい文句は「学年によるカリキュラムの区分がなく、入学から卒業までの間に決められた単位を修得すれば卒業が認められる高校。個性や希望を取り入れた学習プランの作成、多様な教科・科目の設定」。学校が用意したカリキュラムをクラス単位で受ける学年制と違って、生徒が自分で時間割を選択することが中心的な特徴です。「留年」がなく、全日制中退者が転入した場合などに過去に履修した単位を引き継ぐことができるなどの利点があります。

しかし実際には、限られた数の教員しか配置できないことから、設置できる講座は限られるのが現実。とりわけ過疎地の小規模な定時制高校に導入しても「到底やっていけない」という指摘が強くあります。

自己管理能力が充分ある生徒であれば、単位制のメリットを一定生かせる要素もありますが、実際には多くの生徒にとって担任教員との関係が希薄になり、教員が生徒の状況を把握できない、支えとなるクラスや学年が機能しないことにより欠席が増え(授業のない空き時間ができるためホームルームにも生徒が集まれない)、生徒の自治活動や学校行事に困難が生じる(体育祭に生徒の3分の1しか参加しない)など、発達途上の生徒に「自由に選択」させることが、発達を保障することにつながらない実態があります。それどころか「授業をサボるのは、生徒の自己責任」だからと、学校の生徒切り捨てにつながる危険性すらあります。

学年制の長所を取入 北高校

1月21日の学習会では、鈴木敏則・日高教中央執行委員が「ツッパリ」とともに不登校経験者の入学が増加している全国の定時制高校と単位制高校の現状について報告し、1991年から単位制が導入された県立北高校の教員が同校の取り組みについて発言しました。「単位さえとれればよいと遠足に生徒が1人しかこない。単位制によって学校が荒れるというより溶けていくような状況がある。学校独自の改革の取り組みで、@クラス単位で授業を受ける、A空き時間を作らない、B毎日のホームルーム義務付けなど、学年制の長所を大幅に取り入れ、2学期制から3学期制に戻すことも求めているが、残された課題はまだまだ多い」という報告がありました。

討論では「単位の各校相互乗り入れを可能にして、定時制高校の統廃合を容易にする狙いがあるように思える。廃校して現存する生徒を別の学校に通わせて済ませるつもりではないか」、「県民に内容を広く知らせ、定時制高校が地域からなくなってもよいのかを地元に考えてもらうべき時」という発言とともに、今回の県教委の計画は19年度から在校生も一斉に単位制に移行することから「学年制として入学しているのに、途中で県教委の都合で変えることが生徒に対して許されるのか」という意見も出されました。