2006年1月1日

シカ食害で四国の森ピンチ 急がれる適切な個体数調整
白髪山(本山町)のオスジカ 山崎三郎氏提供

ニホンジカの大量増加により高知県に残された貴重な森林が危機に瀕していることをご存じでしょうか。2005年12月18日には三嶺を守る会や四国森の課回廊をつくる会など自然保護団体が高知市内でシンポジウムを開催し、現状の科学的な把握と適切な個体数管理の必要性を訴えました。

現状 これまでシカの食害は林業被害を中心に問題になっていました(ヒノキやスギの苗や成木の皮をはいで食べる)が、これに加え最近目立つのが三嶺(物部村)、白髪山(本山町)、三本杭(四万十市)など貴重な森林が残る山域の被害。「樹皮を剥がれての立ち枯れ、絶滅危惧種の草木類が危機に瀕し、森林再生が不能になる寸前まで深刻化している」(山崎三郎・元森林総合研究所四国支所研究官)。

本山町でシカと共存する林業に40年間取り組んできた山下幸利さんは「白髪山周辺に40年前には15頭しかいなかったが今は1500頭まで増えている」と言います。登山者からも「至るところでシカを見る」という声が聞かれ、県内全域で猛烈にシカが増えているのは確実ですが、調査が充分に行われておらず実態が正確に分からないのが現状です。
 
何故増えた? ニホンジカ急増の最大の要因はこの10年ほど、山の降雪が極端に減った(今冬は例外的に雪が多い)こと、狩猟人口の減少、天敵の消滅などがあげられます。化学肥料を使用した「おいしい」苗木、部分間伐で切り倒した木を放置することによりエサ場を与えていることも指摘されています。「ニホンジカは単独で動くカモシカと違い5〜6頭の群れで行動し、エサを同じ場所で何時間でも食べ尽くす習性があり被害が大きくなる」(中西安男・高知県特定鳥獣保護検討委員)。

対策 これ以上の食害を防ぎ森林を保全するためにニホンジカを適正な個体数にコントロールする必要があります。前提として実態を科学的に把握する調査実施、メスジカの狩猟対象化(高知県では禁じられていたが17年から一部解禁)、高齢化が著しい狩猟家を育成する施策、シカ肉に付加価値をつける製品化などが急がれていますが、高知県の林政においてシカ問題の位置づけは低く後発県となっているのが実態です。

シンポでは頭数調査(糞を数える)に登山団体の協力を得て取り組むことはできないか、調査や狩猟奨励策の財源として森林環境税をあてるように働きかけを強めるべきという意見が出されました。森林を保全する緊急課題として県の森林行政が位置付けなければならない問題といえます。