2005年12月22日

部落解放同盟県連が地区実態調査を要請 県教委は否定

部落解放同盟県連(野島達雄委員長)は12月20日、県教育委員会に対し「三位一体改革の下で差別撤廃・人権確立施策の推進」を求め要請を行い、大崎博澄県教育長をはじめとする県教委幹部が対応しました。

解放同盟からは野島委員長、山戸庄治書記長などが参加(高知市議を辞職した藤沢朋洋書記次長は参加せず)。要請の中で強調されたのは、「部落」内外の格差の「実態調査」実施でした。解放同盟は全国的に「差別の現実に深く学ぶ」ために旧同和地区内外で線を引いた「調査」を一貫して重視しており、この日も繰り返し要求しましたが、県教委は「実態は学力など課題ごとに把握する。以前のような地区を線引きした調査をすることにはならない。やることが問題の解決につながるのか」と否定しました。

また解放同盟側は人権教育の中での同和教育の位置づけについても強調。「同和教育より障害者問題を勉強するという教師がいるという現実を県教委はどう受け止めるのか」と指摘して同和教育の埋没を懸念し「復権」を求めました。藤本昌司・人権教育課長は「同和教育は同和対策審議会答申(1965年)以前からあった。外部委嘱している人権教育推進協議会でも同和教育が使命を終えたかのような風潮があるが、後退することがないようにという意見が多く出ていることを踏まえて取り組んでいく」と同和教育を継続する姿勢を強調しました。

解説 解放同盟側は「実態調査」の重要性を説くために「1人1人の子供を大切にするためには家庭訪問をして家庭状況など背景を把握することが大切だ」と盛んに強調しました。これは当然のことですが、居住地や先祖の旧身分にかかわらずすべての子供にあてはまることであり、地区を分けた「実態調査」の理由にはならないものです。

学校の抱える様々な深刻な現実から遊離した旧態依然とした同和教育は、多くの教員の意識の中で位置づけが大きく低下しつつあるのが現実ですが、一方で人権教育という名による同和偏重が残されている学校もまだあります。最大の要因は「同和問題への差別意識は薄らいではいるものの今なお根強く存在している」という県教委の現状認識。同和教育は特別対策以前から行われていたのでこれからも同和教育を継続すべきだという県教委の認識は、劣悪な状態に置かれていた60年代の被差別部落と、30数年間に及ぶ同和対策事業により基本的に格差が是正された今日の状況を混同させる奇妙なこじつけであり、県民の納得を得られるものではありません。今年県教委が作成した教員用の人権教育指導資料「レッツじんけんの冒頭で「同和教育の取り組みを終了したものではない」とわざわざ囲んで強調するなど逆行するような現象もみられます。