2005年12月11日


プルトニウムを燃料にする伊方原発プルサーマル計画 事故時は南国市まで危険エリア 高知県民にも深いかかわり

伊方発電所 左から1、2、3号機

近頃「プルサーマル」という言葉を聞く機会がよくあると思いますが、その中身についてはまだ高知県民にはあまり知られていません。しかし四国電力は愛媛県伊方町にある伊方原子力発電所でのプルサーマル計画を着々とすすめています。プルサーマルとは一体何なのか、高知県民とのかかわりについて考えます。

MOX燃料 

「プルサーマル」とは、プルトニウムとサーマル・ニュートロン・リアクター(軽水炉)」との合成語。現在稼働中の軽水炉型原発から出る使用済み核燃料を再処理して取り出したプルトニウムを、ウランと混ぜたMOX(モックス)燃料にして、再び軽水炉型原発で燃やして発電に使おうという計画です。

プルトニウムは、核兵器の原料にもなる大変危険な物質ですが、現在の軽水炉型原発はプルトニウムを燃やすことを想定されて作られていないことから、原子炉内での核分裂の制御が難しくなり、融点が下がることにより燃料溶融事故を起こしやすくなるなど非常にリスクが高く、「安全性が確かめられていない実験を原発でやるようなもの」、「灯油ストーブにガソリンを入れるようなものだ」という指摘さえあります。

福島県、福井県、新潟県では住民の強い批判によりプルサーマル計画を拒否していますが、四国電力は昨年11月、2010年までに伊方原発3号機にプルサーマルを導入する計画を愛媛県も同意して国に申請。現在は国の「審査」中で、近く結論が出る予定です。計画が本格的に進行しているのは全国で伊方原発のみであり、日本中で計画をすすめるための突破口にしようと狙われています。

何故ゴリ押しされるのか

何故このような危険なプルサーマルを無理矢理すすめようとするのでしょうか。最大の要因は日本のプルトニウム保有量が増え続けているからです。

国と電力会社は、現在運転中の原発敷地内に保管して飽和状態が近づいている使用済み核燃料を「リサイクル」するために、使用済み核燃料を再処理して取り出したプルトニウムを高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)で燃料として使う計画をたてていました。ところが「もんじゅ」が95年にナトリウム火災事故を起こし閉鎖されたことから、プルトニウムが大量に余る事態が発生。国内に5トン、英仏に34トンあるという過剰なプルトニウムを早く「消費」する必要性が生じ、国策として強力に計画がすすめられようとしています。
 
数多くある問題点

一番の問題点は安全性が全く確立しておらず外国でも撤退が相次ぐ中で、強引に計画がすすめられようとしていること。伊方原発がプルサーマル運転で事故を起こした場合には、従来のウラン燃料による事故とは桁違いに深刻な事態が発生し、高知県に及ぶ影響も拡大します。

プルトニウムの強い毒性により(被曝量が2・3倍ある)、死者が出る可能性がある1シーベルトを被曝する危険エリアは距離にして2倍、面積は4倍にも及ぶため、伊方から西風に乗った放射能は、幡多地域はもちろん高知市、南国市あたりまでを覆い、高知県の3分の2がスッポリ危険エリアに入ることになってしまいます(別表)。

またプルサーマルで使われた後に出る使用済みMOX燃料の行き先も処理方法も決まっておらず、計画をはじめてから考えるというお粗末さ。コストもウラン燃料の3倍かかり結局費用は電気料金に上乗せされ住民の負担にされていくという問題点もあります。

伊方原発では1次冷却水漏れなどの事故などが今も頻発しており、「原発やむなし」と考えている住民も「これ以上複雑な運転には反対」という声が強くでています。高知県民にも深く関わる問題としてとらえ、声をあげていく必要があります。

伊方原発事故に1シーベルト被曝することが予想されるエリア 外の円がMOX燃料、中の円がウラン燃料の場合