2005年11月6日


春野町長 違法墓地問題は「外野から弓引かれた」 町議会任期に合わせて合併スケジュール(20年1月) 協議前提の信頼感乏しく

             
      第1回合併協議会  春野ぺースで事が進んでいる  


高知市と春野町の合併をすすめるための合併協議会が10月17日の第1回協議会を皮切りに始まりましたが、協議会の立ち上げを前に氏原嗣志春野町長が違法墓地問題について「外野から弓矢が射られた」と公言したり、合併期限を一方的に平成20年1月と決めつける発言をしていたことが明らかになっています。そこには違法墓地、ゴミ処理の一部事務組合加入問題、ゴミ収集業務の同和団体への違法な覚え書きによる委託など合併にむけた重大な課題を真摯に解決していく姿勢を見ることはできません。

氏原町長の発言は8月20日に「春野町政策アドバイザー懇話会」という町が組織した審議会の場で行われたもので、町の公式ホームページにも議事録として掲載されています。

「墓地の問題については、外野から弓矢が射られた内容のものが強く感じていますので、このことを高知市側がどのように考えるかが非常に不安材料でございます。しかし、再三再四高知市側にお願いをしてきたことは、このことをもって法定協議会が立ち上がらなくなるようなことのないように、そのことをしっかり、高知市長に自ら訴えてまいっておりますので、決して、悪い方向へは行かない、良い方向に持って行っていただけるものと、確信をする(略)」

敵愾心むき出し

違法墓地を真摯に反省して解決する姿勢よりも、合併の障害が法定協設置直前に持ち出されたことへの敵愾心がにじみ出ています。この他にも合併に批判的な町民に対する氏原町長の敵愾心は尋常ではありません。

8月20日の懇話会の席上では「1人でも反対をする意思表示のある方は、住民に対する重大な反逆行為であるというふうに私はその場で徹底的に批判をさせていただきます」と合併に批判的な町議に圧力。10月17日の第1回合併協議会でのあいさつでも、春野町内で違法墓地をめぐって住民監査の運動が起きていることや、春野町議会で合併協議会条例の採決に欠席した議員に対し強い調子で批判を加えるなど異様ともいえるものでした。
 
「小出しではない」
 
高知市議会では、合併協議会を立ち上げを目前に違法墓地や同和団体への違法な覚え書きの存在が報道によって明らかにされ、その後も違法墓地の存在が出てくることに対し「春野町は情報を小出しにしている」と不信感が高まっていました。

このことについて氏原町長は懇話会で「小出しではない、全て高知市に報告していた」と高知市に問題があったように述べていますが、高知市の見解は真っ向から対立。「(高知市の)環境部の再調査・精査の結果、新たに確認された」(9月市議会での山や高知市企画財政部長の答弁)と、高知市側の指摘により問題が明らかにされたと明言しています。協議が始まる前からこの有様では先が思いやられます。

すでに決められている合併期限

重大なのは合併の期限について氏原町長が8月20日の懇話会で以下のように述べていることです。「第2回の住民のみなさんがたとの意見交換会(6月11日)の中でも、かっちりとお約束しましたように、合併目標日限は、20年の1月1日。それを逆算をすると、18年の9月議会。現在の春野町議会の議員の任期の中で処理をしていただく、当然11月に、議員の任期の改選があるわけですので、新しい構成になるとまた、難しくなるという要素がありますので、どうしても今の議員のみなさんがたにその責任を果たしていただきたい、そのことを考えると、やはりこのスケジュールは変わりません」

10月17日の第1回合併協議会の席上、岡崎市長は、氏原町長の言葉通りに20年1月という期限を明らかにしました。両自治体の将来を決める重要な問題が、なぜ春野町議会の任期に拘束されなければならないのでしょうか。高知市民にはまったく関係のないことです。

住民代表に前助役?

合併協議会の委員は執行部の意をくんだメンバーが占める仕組みになっています(首長が任命)。高知市選出委員の場合は、市民から選ばれる4号委員(定数7人)のうち、6人が鏡村・土佐山村との協議会で委員を務めた人物。前回は執行部を代表して委員を務めた前高知市助役が、今回は市民代表として4号委員に加わっています。

また協議会委員には市議が3人出ていますが(田中健、楠本正躬、岡崎洋一郎の各氏)、いずれも賛成派であり、合併協議会設置に約3分の1の反対があった議会の意思を反映した構成になっていません。また「学識経験者」という名目で県下の合併を強力にすすめてきた県市町村合併支援室長まで委員になっています。

違法墓地や一部事務組合、覚え書きなど高度な知識が必要な合併の課題の審議に市議出身の委員の役割は決定的といえますが、果たしてこのような構成の委員会で議論を深めることができるのか懸念されます。第1回協議会の席上でも事務局が一方的に報告するだけで、ほとんど意見は出ませんでした。

第1回協議会で岡崎市長は20年1月という合併のスケジュールについて「課題が解決した場合のひとつの想定」と繰り返し、出口が固定化されたものではないことを強調しました。双方の自治体の将来に禍根を残さないために、合併ありきでスケジュールを消化するのではなく、課題を徹底的に審議することが合併協議会に課せられた使命といえます。