コスト先行 都市計画軽視 評判よくない高知駅前複合施設
高知駅前の県有地
県が発表したJR高知駅前の県有地を県立図書館・県民文化ホール・高知女子大の複合施設として活用する案の是非について議論が起こっています。10月21日の県議会企画建設委員会で複合案が出てきた経過について執行部が説明しましたが、委員からは批判的な意見が多く出されました。高知駅前県有地への複合施設建設の課題について考えます。
「3点セット」の複合施設構想については9月県議会冒頭の所信表明で橋本大二郎県知事が言及しました。その後の執行部の説明を合わせて現在判明している内容は、@2000席と500席のホール、A県立高知女子大と高知短期大学の一部キャンパス、B県立図書館(女子大図書館と統合)を複合させた高層ビル(敷地面積は6200平米、述べ床面積は37584平米を想定)で、事業費は180億円から230億円、県直営か建設PFIによる手法を検討。永国寺町(女子大)と本町(文化ホール)の跡地については売却して資金捻出の可能性あり。
執行部の狙いは建てかえや大改修が迫られている3施設をこの際一気にまとめることによりコストを圧縮することにあります。
■高知市長 「いささか唐突」
県が突然9月に県が構想を発表したことに対し、県議会や共同で駅前再開発事業に取り組んでいる高知市からは懸念する声があがっています。岡崎誠也市長はいささか唐突」と9月高知市議会で答弁。市議からは反対する質問もでています。県執行部は「まだ荒っぽい検討段階」、「ざっくりした話」と計画が煮詰まっていないことをさかんに強調しますが、拙速な発表であったことは否定できません。
県立大学や県立図書館では、将来像を探るための検討作業を時間をかけてやっている真っ最中でした。今回の「3点セット構想」は頭越しの感は否めず、現場や県民の声が反映した構想とは言い難いものがあります。特に女子大については、地価の高い用地を売って建設資金を捻出することが主たる目的で計画に引き込まれたのではないかという指摘もあるほどです。
執行部が構想を説明した県議会企画建設委の議論では、「21県政会」以外の多数の会派の批判的な意見で占められました。駅前のビルが大学の学びの空間にふさわしいのか、大学に併設しなければならない運動場や体育館はどうするのか、最大230億円にもなる資金調達への不安に加え、特に自民党委員からは、県民文化ホールを改修するこれまでの方針を転換したことへの不信感とコスト優先で「地盤沈下」が著しい中心商店街に配慮がないと指摘する声が続出。
日本共産党と緑心会の吉良富彦委員は「メリットだけでなく、移転によるデメリットがどれくらい検討されているのか。コスト面のみでまちづくりからの観点が希薄だ」と都市計画のゾーニングから施設の配置が適当かどうか慎重に検討することを求めました。執行部は「具体的な検討はこれから」と述べるにとどまりました。
■盛岡の施設に瓜二つ
岩手県盛岡市(ほぼ高知市と同規模の人口)で、盛岡駅西口複合施設「アイーナ」という施設が平成18年に開館します。県立図書館、運転免許センター、岩手県立大学キャンパスなどが入るなど(大学キャンパスとは言うがワンフロアーの一部だけなので、どの程度大学の機能が移転されるのかは不明)、県構想とこの施設はまたったくの相似形。浦安市、吹田市、浜松市などでも似たり寄ったりの施設が計画されています。巨費を投じた挙げ句、活用方法がみつからない地方都市の駅前再開発の「後始末」のために、この種の複合施設をもってくるのが、「ブーム」になっていますが、このような動きに右往左往するのではなく、じっくり将来の都市計画を見通した慎重な検討が必要になっています。
青の県有地に複合施設が計画されている